セ界1位のセカンドだ。広島菊池涼介内野手(30)が、セ・リーグ二塁手の同一シーズン連続守備機会無失策の記録を更新した。7回に二ゴロをさばいて93年和田豊(阪神)の432に並ぶと、延長10回には2度の守備機会をこなして一気に2つ更新した。引き分けに終わった中で、名手が新たな歴史にその名を刻んだ。

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こだわり続けた守備で、セ界の頂点に立った。延長10回1死一塁、若林の犠打を処理した捕手坂倉の送球を受けた菊池涼が、開幕からの無失策を433とし、93年和田豊(阪神)のセ・リーグ守備機会連続無失策記録を更新した。さらに2死二塁から中島の二飛を捕球し、記録を434まで伸ばした。

「いつもシーズンはエラーゼロで終えるという信念でやってきた。開幕から打撃がダメで迷惑をかけてきた部分がある。それでも『守備だけは』と思って毎日やってきたことの積み重ね」

セ界NO・1二塁手の称号に誇らしげだった。人一倍、守備に強いこだわりを持つ。グラブにはフィット感と自然さを求め、ボロボロになるまで同じものを使い続ける。「重く感じるから塗らない」と手入れにオイルは使用しない。守備と打撃とでは動きが異なるため、スパイクを履き替えていた時期もあった。

動きは年々洗練されている。頭にはスコアラーからの情報だけではなく、これまで自分の体と目で感じてきた打者の傾向や記憶が入っている。加えて打席でのファウルやスイング軌道によって、投手の投球動作とともに1歩、2歩ポジションを変える。第六感を研ぎ澄まし、異次元の守備を可能にしている。

14年に二塁手のシーズン最多535補殺を樹立し、13年からは7年連続でゴールデングラブ賞を受賞する。ただ、昨季はレギュラーの顔ぶれが大きく変わったことによる連係不足もあり、4年ぶりの2桁失策を記録した。「打てなくて、イライラしたこともあったかもしれない。気持ちの切り替えが難しいときもあったかもしれない」。心技体の充実によって新たな称号を得た。球界にその名を刻んだ名手が次に目指すのが「究極の目標」というシーズン無失策での完走だ。【前原淳】