ヤクルト坂口智隆外野手(36)が、通算1500安打を達成した。プロ野球129人目。現役野手では最後の近鉄戦士の達成となった。

近鉄にドラフト1位で入団してから、プロ18年目。試合後、まず「僕みたいな選手が長くこうやって続けてきて、1本1本積み重ねていくにはいろんな方の支えがないと、ここまで自分自身、できていなかったと思うので、まずは支えてもらった方に感謝したいですね」と口にした。

生まれ変わった坂口が、節目に到達した。昨年の開幕カード阪神戦で死球を受け、左手親指を骨折。ベンチ裏で打撃グローブをとると、血で真っ赤に染まっていた。「2週間で戻る」とリハビリを開始したが、痛みはなくならなかった。結局、ヤクルト加入後最少の22試合出場8安打にとどまり、悔しいシーズンとなった。

プロ18年間で最もバットを握り、振ったのが昨オフだった。バットのグリップの形も変え、新しい打撃の感覚を得た。「ケガをする前よりもよくなっている。確実にステップアップしている」と手応えをつかんで臨んだ今季だった。ここまでの本塁打数は、キャリアハイを更新する9本。「これまでの感覚と全く一緒に戻るわけではない。昨年、リハビリから取り組んできた『こうやってやったら』というのが、けがをして、新しくなった自分というのが、少しずつ形になってきているのかなと思う」と言う。

1500安打を先制適時打で達成すると、ベンチは大盛り上がりだった。後輩やチームメートに慕われる兄貴分。昨季、リハビリが続いていた時期も、みんなが復帰を待っていた。大引啓次内野手(当時)は、坂口のバットを「借りているから」と試合で使用。広岡大志内野手は、坂口がクラブハウスのロッカーに置いていた打撃グローブを、遠征に持っていっていた。坂口のTシャツを着る裏方スタッフもいた。

今でも、痛め止めを飲まない日はない。現役の野手では、最後の猛牛戦士。「僕みたいな選手が1500安打を打って、『坂口そんなに打ってたんや』と思われる方もたくさんいると思うので。地味にコツコツと、積み重ねてきた結果。僕は数字というのはあまり意識したことないので、(プロに)入ってからも何本打ちたいとかそういうことじゃなくて、試合に出たいという思いで常にやってきた」と謙遜するが、しっかり主軸を担う。今はもう、ヤクルトに欠かせない燕戦士だ。【保坂恭子】