阪神能見篤史投手(41)が来季の戦力構想から外れたことが22日、分かった。21日に球団と話し合いの場を持ち、方針を伝えられた。すでに来季の戦力構想外を告げられている現役最年長の福留孝介外野手(43)に続き、チーム投手最年長の功労者も今季限りで退団する。この日の広島戦は最速148キロの真っすぐを主体に7回の1イニングを完全投球し、敗戦の中で健在を示した。今後は現役続行の道を模索するとみられる。

  ◇   ◇   ◇

能見は優しくほほ笑んだ。3アウト目の三ゴロをさばいた大山の方を向き、グラブをたたいた。投じた6球はすべて直球。41歳の熱投に、いつも以上に熱く激しい歓声と拍手が降り注がれた。

「ファンの方々の声援というのは非常にありがたいですし、後押しされました。その声援もあって真っすぐで押すことができました」

4点を追う7回に登板。1イニングを完全に抑え込んだ。7番ピレラは145キロで左飛、8番上本は146キロで中飛、代打羽月は146キロで三ゴロ。最速は148キロを計測した。力強い直球に思いを込めた。

前日21日、球団から来季の戦力構想外を告げられた。一夜明け、晴れやかな表情で甲子園に現れた。今季限りでの現役引退を表明している藤川とキャッチボール。最後は互いをねぎらうように笑顔で抱き合った。

「球団から今後について話があったのは事実ですが、内容については自分の口からお伝えすることはありません。1つファンの皆さんにお伝えしたいことは、タイガースのユニホームを着て皆さんの前でプレーするのは今季が最後になる、ということです。チームはまだシーズンを戦っている最中ですので、目の前の試合に集中していきます」

広報に託した言葉からあふれ出した虎党への感謝を、マウンド上で体現した。

その実績は長い球団史の中でもひときわ輝く。先発としては5度の2ケタ勝利を記録。中継ぎに配置転換された後もフル稼働を続けた。18年には、球団生え抜き選手では33年ぶりの通算100勝も達成している。プロ16年目の今季は中継ぎで31試合に登板し、防御率4・76。それでも投手陣最年長としてチームに欠かせない存在だった。

誰もが認める功労者。球団はこれまでの実績に敬意を示し、引退の花道を飾るプランも用意していた。ただ、本人は現役続行に意欲を示しているとみられる。

「この縦じまのユニホームを着て投げられるのも残り少ないですし、感謝の気持ちを持って投げていきたいですね」

今季は残り15試合。まずは縦じまで完全燃焼する。

 

◆能見篤史(のうみ・あつし)1979年(昭54)5月28日、兵庫県生まれ。鳥取城北、大阪ガスを経て04年ドラフト自由枠で阪神入団。12年に最多奪三振を獲得。14年には5試合連続2桁奪三振のセ・リーグ新記録をマーク。18年6月28日DeNA戦で通算100勝達成。通算440試合で104勝93敗、防御率3・34。13年WBC日本代表。180センチ、74キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸9500万円。