西武が中村剛也内野手(37)の21本目となる満塁弾で、12連勝中だった首位ソフトバンクを食い止めた。

1点を追う8回1死満塁、左中間へ逆転の8号満塁アーチ。自身の持つプロ野球記録を更新する21本目のグランドスラムで、今カードでのソフトバンク優勝とチームの3連覇完全消滅を阻止した。2位ロッテと2ゲーム差に迫る勝利を呼び込み、通算300勝に王手をかけた辻発彦監督の62歳の誕生日に花を添えた。

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主役は満塁が大好物のおかわり君だった。8回1死満塁。中村は4球連続の直球が、高めに浮いたのを見逃さなかった。左中間へ逆転満弾。打線はソフトバンク投手陣の前に沈黙が続いたが、3四球で訪れた絶好機に回ってきたのが、昨季の満塁成績が32打数17安打4本塁打、打率5割3分1厘という千両役者。「少し打つゾーンを高めに設定してたんで、ちょうどきたんで打てました」。21本目の満塁弾が持つ意味は、両チームにとって大きかった。

負ければ3連覇が完全消滅する危機だった。相手は12連勝という勢いに乗るソフトバンク。しかも敵地3連戦。3連敗すれば宿敵の胴上げを見届ける可能性があった。計り知れない重圧を背負っているのかと思いきや、百戦錬磨の中村は「わかんなかったっす。あんまり知らなかったですね」とどこ吹く風。代名詞の本塁打で主役となり、ライバルの足を食い止めた。

最高の舞台を演出したのは、62歳の執念が凝縮された采配だった。辻監督は1失点で粘る先発十亀を3回で早々と交代。平井を投入し、5回2死でワンポイントに左腕小川を送った。短期決戦のように次々と継投を刻み、1点差で食らいついて迎えた8回の攻撃で逆転に成功した。7人の投手を送り込んだ辻監督はこの日が誕生日。でも中村は「まあ、そんなことをバッターボックスで何も考えてなかったですけど。良かったです」。最高のプレゼントになった。

これで2位ロッテと2ゲーム差。主演・中村、演出・辻監督で、逆転の西武が終盤力を発揮。個人としてもチームとしても勢いに乗る勝ち方に「どうっすかね? わかんないけど、明日起きてから考えます」。いつものおかわり君が戻ってきた。【栗田成芳】

西武平井(4回から登板し1回2/3を完璧の内容)「感覚がよかったので自信を持って投げようと。僕自身、久しぶりにチームに貢献できたと思います」

西武森脇(7回に登板し3者凡退に抑え6勝目)「ここ最近いい内容ではない中でも、結果的に抑えることができた試合もありましたが、今日はよかった。チームが勝ったことがうれしい」