来季構想外で今季限りの退団が決定的な阪神福留孝介外野手(43)が、タテジマラストゲームに臨んだ。29日のウエスタン・リーグ中日戦(鳴尾浜)に3番左翼で志願のフル出場。タイムリーや好返球で攻守に健在ぶりをアピールした。8年間在籍したチームへの感謝を語り、現役続行への意欲も示した。

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悲愴(ひそう)感はなかった。福留が愛着あるタテジマに笑顔で別れを告げた。鳴尾浜でのウエスタン・リーグ中日戦は自身にとって、事実上の今季最終戦となった。「このユニホームを着て公式戦をやるのは、最後だと思って。すごくうれしく、楽しくできました」。球界最年長の43歳が若手に交じって、野球少年のように全力プレーを見せた。

初回だ。2死二塁で藤井の左前打にチャージし、二塁走者を本塁で刺した。正確なワンバウンド送球だった。バットでも本領を発揮。5回2死二塁で、左腕浜田智から鋭い打球を放った。一、二塁間を破る右前タイムリー。攻守で健在ぶりをアピールした。

阪神の来季戦力構想から外れ、今季限りで退団する。30日からの最終カードのソフトバンク戦(タマスタ筑後)には同行しない。メジャーから日本球界に復帰し、8年。優勝の力になれなかったことを悔やみながらも胸を張った。「タイガースで8年やらせてもらったのがすごくいい経験だと思いますし、財産だと思います」と感謝の気持ちを表した。

プレーだけでなく、後輩たちに自らの経験や技術を惜しみなく伝えてきた。チームに残したものを問われると「何もないでしょう」と謙遜したが、こう続けた。「野球が好きでやれる、やらせてもらえることがどれだけありがたいか。そういうことを選手がみんな少しでも感じてくれたら、それはそれで良かったと思う」。プロ野球選手であることの重みを選手たちによく話をしたという。鳴尾浜では2回り近く年の離れた新人選手らとの交流は刺激にもなった。「僕もまた改めて見直すこともできましたし、すごくいい時間を過ごさせてもらってる」と、うなずいた。

現役続行への強い意志を持つ。「自分の中ではある程度決めている。別にユニホームを脱ぐという気持ちを持っているわけじゃない。元気に動けているので、どこかでまたチャンスがあれば。自分の人生なので、悔いを残して終わりたくない。チャレンジする気持ちをなくさないように。自分がまだまだと思っているうちは、挑戦し続けたいなと思います」。福留の野球人生は挑戦の連続だ。この先は険しい道が待っているが、戦いはまだ続く。【奥田隼人】

 

▽阪神平田2軍監督(福留について)「打つだけじゃなく(野球への姿勢や)守りも含めて若い選手にすごくいいものを残してくれた。孝介に追いつき、追い越す選手をしっかり育成していかないといけないと改めて感じさせられたね」