巨人が昨季の4連敗から雪辱を期す日本シリーズ。下馬評はソフトバンク有利の中、8年ぶりの日本一を目指す戦いが開幕した。原辰徳監督(62)の思考や、チームの話題にフォーカスする巨人担当による日替わり連載「G-Zoom」をお届けします。

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巨人に優勝マジック21が点灯していた10月2日。広島遠征を終えたチームは甲子園に向かった。私はというと、反対側のホームにいた。新幹線の切符には広島-鹿児島。特急電車へと乗り継いで、最終目的地は戸郷翔征投手(20)の地元、宮崎・都城。日ごろの原稿で「戸郷は宮崎の大自然で育った」と書いていた。実際はどんなところなのだろうか。母ヒトミさんに思い出の地を聞き、車で巡った。

戸郷が釣りを始めた沖水川には想像を超える大きさのコイが泳いでいた。近くには芋焼酎「黒霧島」などで有名な霧島酒造の本社工場がある。10年に100億円を投じて増築した大規模な工場だったが、コイのデカさに度肝を抜かれた。うねうねと泳ぐ姿に一瞬、鳥肌が立った。「1メートルを超えるコイを釣っていましたよ」。ヒトミさんの言葉がフラッシュバックした。蒸したサツマイモを餌に釣り上げていたらしい。同じ条件で釣ろうにもサツマイモを蒸す手段はない。代わりに近くの「ドン・キホーテ」で焼き芋を購入し、大物釣りに挑戦した。

1人での取材だったため、釣り上げる瞬間を撮影しようと三脚も買った。釣る気満々だった…。午前10時ごろから始め、2時間ほどたっただろうか。1度もかからなかった。後ろの河川敷グラウンドでラグビーをしていた少年たちも気づけばいなくなっていた。

後日、ヒトミさんと連絡を取った。失敗談の報告とともに、雑談をしていると、戸郷の兄悠大さんが、オリックス山本由伸投手(22)と都城高校で同学年だったことを聞いた。戸郷が聖心ウルスラ学園3年時に、山本は高卒2年目で54試合に登板し、4勝2敗、32ホールド、防御率2・89と大ブレーク。高校入学前に「一緒に野球しようぜ」と声をかけられたこともあった戸郷は「めちゃめちゃ活躍してて、同じくらいになりたいと思ってました。高校時代にサインをもらったこともあるんですよ」と憧れだった。

それから2年後の今季、戸郷は9勝6敗、防御率2・76と山本と同じく高卒2年目で才能を開花させた。そして迎えた日本シリーズ。第1戦、第2戦の舞台は、普段山本が本拠地とする京セラドーム大阪。戸郷はリリーフとしてチームで唯一2戦ともに登板した。個人的には、同地で先発として躍動する勇姿が見たい。再び京セラドーム大阪に戻る第6戦以降までもつれ込めば、先発に回る可能性もある。そのためにもまずは、宮崎・都城から270キロほど北上したペイペイドームで巨人の勝利を期待したい。【久永壮真】