3年目の与田中日を支える伊東勤ヘッドコーチ(58)がインタビューに応じ、10年ぶりV奪回へ2つの強化ポイントを明示した。テーマは木下拓を中心にした正捕手固定と、大島、京田の1、2番コンビによる盗塁増&機動力アップ。西武黄金時代の正捕手で、西武とロッテで監督も務めた“竜の頭脳”は、8年ぶりのAクラスに満足せず気合十分だ。

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-今季は木下拓が88試合に出場してブレイクした

伊東ヘッド(以下伊東) 一番は(去年主力だった)加藤が伸び悩んだところ。木下に出番がきた。

-A(アリエル)・マルティネス、郡司らを退けての定着

伊東 捕手としての技術。取る、スローイング、構え方、座りがいい。試合に出るうちに、性格が優しい弱点を克服した。打つ方は元々、魅力があり、ここぞという場面で打ってくれた。打つことで、いいリズムで守りに就けた。大野雄が育ててくれた。

-リード面の成長点は

伊東 投手の一番いいボールを引き出すことを覚えた。使っている側も、あそこまでできると思っていなかった。

-アリエルのケガも大きかったか

伊東 彼の場合は捕手としてではなく、打撃だからね。俺らは守りを重要視する。でも長打が打てない打線で彼(アリエル)は長打もある。

-来季は木下が正捕手筆頭か

伊東 こちらの考え方次第。最低線を今年できたところからスタートさせるか、もう1回ゼロからスタートさせるか。少し目線を上げた状態から木下はスタートさせる。

-木下に求めるものは

伊東 100試合は出られる体力をつけて欲しい。休みながら出させる余裕はない。1人で1年をまかなって欲しい。

-捕手の体力とは

伊東 やっぱり精神的なもの。勝てば心地よい疲れ。でも接戦で逆転されたときのダメージは大きい。レギュラーを取れば、次の日に切り替える強さが出る。試合に出れば出るほどついてくる。

-来季の捕手戦略は

伊東 チームとして、捕手が固定できないと落ち着かない。セのどのチームも固定していない。このチームに来てから思っていた。今年は加藤が一本立ちしてくれるとスタートしてダメだった。ただ今年は木下で進んだけど、来年も木下かと言えばわからない。また今年と同じような状況で進むと、チームとして来年も苦しい。木下を頭と考えている。加藤の奮起も促します。加藤が良くなれば、木下も良くなる。桂もいる。来年はその3人かアリエルが捕手として本格的にやれるか。

-来季優勝に向け、捕手以外の強化ポイントは

伊東 点が取れないのは相変わらず。長打不足はしょうがない。足を使ったり、小技をからめた機動力で1点を取りにいくしかない。

-今季33盗塁はリーグ5位でトップの巨人、阪神の80個の半分にも満たない

伊東 思い切りがない。行けのサインは出しているけど、なかなか行けないのが現状。オープン戦とかでは、アウトになってもいいからとにかくトライしていく。アウトになっても、何かをつかめば次につながる。

◆今季の中日捕手陣 開幕スタメンは2年連続で強肩の加藤が務めたが、守備面、リード面の不安定さから再編。7月に育成から支配下登録されたA・マルティネスが打てる外国人捕手として頭角を現したが、左手の故障からリタイア。その後は加藤、新人郡司、木下拓で回したが、大野雄とバッテリーを組んだ木下拓が抜け出し、最終的には87試合でマスクをかぶった。

◆伊東勤(いとう・つとむ)1962年(昭37)8月29日、熊本県生まれ。熊本工から所沢(西武球団職員)を経て、81年ドラフト1位で西武入団。84年から正捕手を務め、実働22年で日本シリーズに13回出場し、7度の日本一に貢献した。03年に現役を引退し、04年から4年間西武監督を務めてリーグ優勝と日本一を経験。09年WBC総合コーチ。13年から5年間ロッテ監督を務め、3度CSに進出した。現役時代の通算は出場2379試合、1738安打で打率2割4分7厘、156本塁打、811打点。ベストナイン10回、ゴールデングラブ賞11回。17年野球殿堂入り。181センチ、84キロ。右投げ右打ち。