夢のある数字だ。巨人菅野智之投手(31)が14日、都内の待機先で契約交渉を行い、日本球界歴代最高年俸となる年俸8億円の1年契約で更改した。昨季から1億5000万円増で、03、04年ペタジーニの7億2000万円を大幅に超えた。1987年(昭62)に落合博満(中日)が年俸1億3000万円で初の1億円プレーヤーとなった。先人が切り開いてきた道を踏みしめてきた平成生まれのエースが、ついに最高峰に立ち9年目のシーズンに挑む。(金額は推定)

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都内の待機先で書面をやりとりしながらの交渉は、多くの時間を要することなく合意に達した。菅野が歴代球界最高年俸を塗り替える年俸8億円で契約を更改した。金額に関して明言は避けたが「それだけプレッシャーもありますし、見合った活躍をしないといけない。身が引き締まる思いです」と責任感を強調した。

東海道新幹線は「こだま」と「ひかり」だけが運行していた87年。2年連続3冠王の落合博満が切り開いた年俸1億円の大台から2年後に、生を受けた。

32年後の令和3年。「のぞみ」が都市間をつなぎ、リニアモーターカー誕生も目前に迫る。31歳のエースが、先人たちが紡いできた歴史を一気に塗り替えた。「あまり、お金の話はしたくないですけど、悲しいことに僕たちはお金でしか評価されない。自覚ある、責任あるピッチングを見せていけたら」。トップランナーとして希望を背負う。

メジャーリーガーに引けを取らない評価を手にした。「自分の中では、ここまでいけると思ってなかった。かと言って、ここに来るまで予想してなかったわけではない」と描く地図に照らし合わせた。かねて「自分がいる場所。現在地を把握することが大事」と話していた。先人の歩みを追い、常に現在地を確認し、1歩ずつ進んできた。だから日本球界の未来を切り開ける境地にたどり着いた。

高みを見つめる視線に一点の曇りもない。「まだまだ道半ば。パフォーマンスは上がると思いますし、成績的にも良くなると思う。本当に、本気で思ってます」と力んだ。ポスティングによるメジャー移籍は断念したが「まずは日本一を常に考えながら、今年が終わったオフに、もう1回メジャーに挑戦できるチャンスがあれば、そこでまたチャレンジしたい」と夢を追う。最後に言った。「お金で残ったのかと言われてますけど、お金で残ったんじゃない。とにかく自覚を持ってやるだけだと思ってます」。球界最高峰の覚悟で挑む。【為田聡史】