阪神取材班がキャンプで興味を持ったテーマ、事象を取り上げる随時企画「推しポイント」。第6回はドラフト4位の栄枝(さかえだ)裕貴捕手(22=立命大)にスポットを当てる。

  ◇   ◇   ◇

投手が誰もいなくなった、正午すぎのブルペン。栄枝が、藤井バッテリーコーチと2人きりで向き合っていた。捕球の構えの姿勢を取り、時にはバランスを崩してよろけた。キャンプ実戦では、暴投や捕逸が1イニングで1回ずつ出た試合があった。ショートバウンドを止める確率を上げるために、「0・何秒」を縮めるための訓練だった。

「低く構えた時に、後ろに体重がかかってしまう。できるだけ前に重心をかけるほど、ショートバウンドに行くまでのスピードが速くなるので」。より重心を前に置くことで次の動作が速くなり、止める確率も高くなる。藤井コーチは「ほんの少し、0・何秒の話かも分からないですけど」と説明した。長い試合の中で、ほんのわずかな時間。だが1つの暴投を防ぐことが、明暗を分ける試合もある。

下半身の柔軟性のなさを自覚する栄枝は、藤井コーチから両足の親指に意識して体重を乗せることを提案された。「構え方とかはあまり学んだことがなかったので。プロの世界に入って、いざコーチの方に教わって、実際やったらすごく速くなりました」。栄枝の声は充実感にあふれていた。二塁送球1秒8の強肩に新たな技術が加われば、さらに魅力が増す。【磯綾乃】