巨人は1日たりとも無駄にはしない。オープン戦初戦となるヤクルト戦の約4時間前、東京ドームでサインプレーの練習を敢行した。

1日にヤクルトとのトレードで獲得した広岡大志内野手(23)に、チーム戦術を落とし込むのが狙いだった。

2日の全体練習後、原辰徳監督(62)は「明日ちょっと早めに来させてサインプレーというものが絡んで。ピッチャーも協力してくれるということなので。ひと通りのサインプレーというものをやっていくと思いますね」と説明していた。発表から2日後、投手陣も含めたチームで新たな仲間に時間を割いた。

トレードは、実現させるのがゴールではない。原監督は「いいトレードになるというのは、双方が活躍することであると。田口は打倒ジャイアンツ。我々は、戦う時には『打倒田口』というところで。広岡君は大いに持っている力を、十二分にジャイアンツで発揮してもらうというところ」と話した。新しい環境でまだ発揮できていなかった能力を発揮させるのが、トレードの真の目的になる。広岡は長打力が魅力の大型遊撃手として期待されてきた有望株。1日でも早く開花させるべく、巨人は試合前練習の開始時間前に、サインプレーの時間を取った。

今回のトレードには「選手の飼い殺しはしない」という巨人の信念があった。だからこそ、先発と中継ぎでフル回転できる田口麗斗投手(25)を新天地へと送り出した。

一方で、獲得した選手も「飼い殺し」しないために、でき得る策を講じた。試合前練習中に広岡との写真撮影に応じた原監督は、この日の古巣ヤクルト戦でいきなりベンチ入りさせる考えを示した。「(出場の)可能性はあるでしょう。非常にさわやかな好青年ですね。とにかく大きく育つんだよ、というね。我々も協力するぜ、というところですね」と、あらためて期待した。

練習時間が早まったのは数十分かもしれない。だが、この数十分にこだわり、可能な限りの準備を施したうえで、すぐにチャンスを与えるところに、巨人の選手の成長を願う本気度がかいま見えた。【浜本卓也】