日本ハム栗山英樹監督(59)がオリックス戦(京セラドーム大阪)で監督通算631勝目を挙げ、「親分」こと大沢啓二氏が持つ球団記録に並んだ。2試合ぶりにスタメン復帰させた、グラウンド外で右目を負傷した中田翔内野手(31)の激走からの逆転勝利。就任10年目の今季は開幕から苦しい戦いが続いたが、メモリアル勝利で連敗を7で止めた。

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栗山監督は監督通算631勝目も、いつものように選手、首脳陣、スタッフをねぎらうエアタッチを繰り返した。「久しぶりだね。本当に久しぶり」。大沢親分の勝利数に王手をかけてから10試合目。チームの歯車がかみ合わない状況が続いたが、投手陣が粘り、打線も粘り腰で逆転した。自身の記録は「全然、関係ないですね」と目もくれないが、メモリアル勝利で連敗が止まった。

選手やスタッフらと水杯を交わすのが恒例になっている開幕戦当日の“出陣式”。今年、杯に指揮官がしたためた文字は「刮目相待(かつもくそうたい)」だった。出典は「三国志」。人の著しい進歩や成長を待ち望むことを意味する。「本気になったら3日で人は変われるんだ」。10年前から変わらぬ思いを杯に込め、10年目で初めて、言葉の意味を選手たちに説いた。

この日、グラウンドには必死に野球と向き合う選手がいた。4番一塁で2試合ぶりにスタメン復帰した中田だ。2日前に打てないいら立ちからベンチでバットをへし折り、ベンチ裏でつまずいて右目を負傷。8日は欠場するほど痛々しい右目は腫れたままで、試合前に指揮官は状態を問われても「(中田に)聞けよ! オレに聞くな!」。それでも就任1年目から起用してきた「4番」で送り出した。

中田は奮闘した。1回の守備では邪飛にダイビングキャッチを試みた。8回の打席では全力疾走で野選を誘って出塁。この激走が浅間の決勝打につながった。何とかしたい気持ちを野球にぶつけ、2日前の中田は消え去った。そんな姿は、開幕戦当日に栗山監督が訴えたメッセージそのものだ。「選手たちにとっては、いかに1つ勝つのが大変なのかと感じてもらえれば」。まだ開幕から12試合目。本気になれば、いくらでもチームは強く生まれ変われる。選手を信じて、指揮官は突き進む。【木下大輔】

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