このままでは死ねん! 岡田阪神ががけっぷちに立たされた。戦場を甲子園に移した第3戦もロッテ打線の前に完膚なきまでにたたきのめされ、日本シリーズ記録となる3試合連続の10失点で3連敗。日本一へ後のないところまで追い込まれた岡田監督は「このまま負けたら何のために1年間、やってきたか分からん」と悲壮な決意を語った。セ・リーグを制した意地をかけ、負ければ終わりの26日第4戦に向かう。

まさかの大敗3連敗で一気に王手をかけられた。だが岡田監督は重苦しい敗戦会見で笑みすら浮かべて言った。「もう見ての通りや。ここという場面もないしな。でも明日で最後になるか、まだ野球ができるのか…。ここまできたらあとは開き直ってやるしかないやろ」。自分に言い聞かせるかのようだった。

井川、安藤、そして下柳の先発陣が打ち込まれ、この日2点ビハインドで投入した藤川までもがロッテの猛打に砕け散った。打線も1番赤星、5番今岡がシリーズたった1安打ずつで分断された。4番金本に至っては、いいところなしの10打席無安打に抑え込まれている。投壊と貧打。シーズン中1度もなかったダブルの試練が今チームを襲い、あと1敗で戦いが終わる危機だ。だが忘れてならないのは、この日まで流してきた血と汗と涙だ。

「せっかく1年間やってきたんやからな。こういう形で終わったら、何のためにやってきたか分からん」

03年日本シリーズで3勝4敗と敗れた翌日、岡田阪神は誕生した。合い言葉は「日本シリーズでの忘れ物を取りに行こう!」。その時流した悔し涙を胸に、井川や藤川らは冬の鳴尾浜を黙々と走り込んだ。秋と春のキャンプではノックの雨で藤本や鳥谷が泥だらけになった。金本や今岡は故障を抱えながら、赤星は骨折しても試合に出続けた。そして2年間かけて、みんなで優勝をつかんだ。もしこのまま無抵抗で4連敗しようものなら、すべてが色あせてしまう。そして何より阪神ファンに申し訳ないと岡田監督は言った。

「みんなシリーズを楽しみにしてくれとった。そんなファンがたくさんおるんや」

この日の7回、桟原が福浦に10失点目となる満塁弾を浴びると、スタンドからは抗議のジェット風船が飛ばされた。「こんな試合見に来たんやない!」「やる気出せ! 本気出せ!」。飛び交う怒号と罵声で甲子園は殺気立ち、ライトスタンドでは仲間の虎ファン同士が大ゲンカ。日本シリーズというのに、途中で席を立つファンも多く出た。これまで何度も力をくれた「日本一のファン」を、これ以上悲しませてはいけない。岡田監督は最後に、ナインに熱く呼びかけた。

「もう負けられんわけやからな。実際にあと1つのところまできたんや。もう調子ウンヌン言うてる場合やない。あとは気持ちや」

明るい材料はない。過去の3連敗4連勝も58年西鉄三原、86年西武森、89年巨人藤田の3回しかない。だがこの壁を破らなければ日本一もない。まずは第4戦。すべてをぶつける総力戦で何が何でも4連敗を阻止し、意地を見せたい。【松井清員】

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甲子園を埋め尽くした阪神ファンが7回、続々と席を立った。藤川がつかまり、桟原がマウンドに向かったときだ。兵庫県尼崎市の駿河美江さん(22=会社員)は「投手の使い方が絶対おかしい。桟原さんには悪いけど、これで試合を投げたのかな、と思った」と采配を疑問視した。右翼スタンド中段では小競り合いがあった。

8回表には三塁側アルプス中段でもトラブル。怒りが収まらず暴れ続けた男性1人が甲子園署に連行された。ただ周囲は冷め切っており「腹いせはやめろ」とば声を浴びせた。男性は岡田監督のレプリカユニホームを着ていた。

ロッテファン約1000人が跳ね続けた左翼スタンド上段にも被害はなかった。最後は一部の虎党もやけくそで一緒に踊るほど。大阪市の田中洋介さん(25=会社員)は「あんな展開でどうでもよくなった。ロッテは楽しそうでうらやましかった」とためいき。試合後は4連敗を覚悟する声も多かったが、ビールを10杯飲んだという田村亮二さん(35=会社員)は仲間4人と「明日は絶対勝ってほしい。4連敗は情けなすぎる。勝てば逆転優勝も夢じゃない」と虎の意地に期待していた。