ロッテのドラフト1位・鈴木昭汰投手(22=法大)が5度目の登板、5度目の好投で、プロ1勝目をつかんだ。

前日に19安打のソフトバンク打線を、7回途中2失点に抑え込んだ。東京6大学リーグで競った楽天早川の「外れ1位」でロッテ入りしたパワフル左腕は、早川と互角の投球を続け、すでにロッテに不可欠な存在に。勝てない苦しさ、自分を伝えたい思い。鈴木昭汰を存分に表現した。

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もう感情を隠せない。球場中の注目が、巨体をネットに倒しながらフライを捕った井上に集まる中、鈴木はマウンドでほえた。5回2死一、三塁のピンチ。グラシアルを抑えた。

「相手の4番で、どうしても打ち取りたくて、ファウルフライ…アウトになってくれないかなっていう願望が、全てにじみ出た瞬間だったと思います」

1勝が欲しかった。4戦で23回を投げて6失点。井口監督がいくら働きをたたえても、勝てない。開幕から1カ月、冷静に「勝ち負けは自分で操作できない。気にしてないです」と話してきたが、もう隠せない。「気にしてますよ。そりゃ、気にしますよ」。奥底の苦しさを吐露し「やっと勝てた…」と笑った。

勝つために新たな手札も出した。投球比率が少なかったツーシームで強力打線を崩した。135キロ前後で右打者から逃げる球。「ツーシームの反応が意外と良かったので、自分としても続けていこうかなって」。140キロ台中盤の直球と合わせ効果を発揮。6回、甲斐に併殺打を打たせたのもツーシームだった。

ドラフト会議で早川の抽選に外れたロッテは、鈴木再入札を即断した。「左腕プラス先発、とにかく力で押せる投手を」と願った井口監督も喜んだ。それでも「早川」の名は聞こえる。「いろんな人からそうやって言われるので、ある程度は思うところはありますけど、早川は競合でいってますし。何も思わないといったらウソになりますけど…」。今や抽選も何もない。新人の域を超えた力投を続け、首位ソフトバンクへの連勝にも貢献した。

コロナ禍でプロ野球選手になった。ファンの目の前で肉声を届けるのも初めて。「鈴木昭汰です」が響き、祝福の拍手が呼応するZOZOマリン。被打率1割9分4厘、三振奪取率9・51はいずれも、規定投球回到達者でリーグ3位。力強さはもう隠せない。昭汰のSHOWTIMEは始まったばかりだ。【金子真仁】

▽ロッテ井口監督(鈴木の初勝利に)「『必ずルーキー初勝利』ということをみんなで言って試合に臨みました。いい形で初勝利をプレゼントできたと思います」