逆転の虎だ! 阪神が12球団最遅となるシーズン25試合目で初の逆転勝ちを収めた。1点ビハインドの7回。陽川尚将内野手(29)の絶妙な犠打から好機を作り、ジェリー・サンズ外野手(33)のバックスクリーンに飛び込む決勝2ランが飛び出した。チームは7度目のカード勝ち越しを決めて貯金11。2位ヤクルトと3ゲーム差で首位をがっちりキープだ。

終盤の逆転劇は矢野監督のささやきから始まった。4-5の7回。先頭近本が右前打、糸原が四球を奪い無死一、二塁とした場面だ。DeNAの4番手平田がマウンドで投球練習を始めると、ベンチ前に次打者の陽川を呼び寄せた。そして、白木のバットを左脇に抱えた男にひと言、ふた言…。

矢野監督 緊張しているやろ? と言ったら「大丈夫です!」と言っていたんでね。その顔を見て大丈夫かなと。陽川の立場になればむちゃくちゃプレッシャーがかかって「やってやろう」というよりは「イヤだ、イヤだ」って緊張するところなんですけど。

長打力が売りの大砲に命じたのは送りバントだった。2ボールからの3球目直球をコツン。勢いを殺したボールは三塁線をなぞるように転がった。「落ち着いて決めてくれた。よくやってくれた」と矢野監督。プロ8年目で通算3犠打だった陽川が、流れを引き寄せる絶妙バント。1死二、三塁と小技でチャンスを広げた。

必死のパッチの虎は止まらない。続く大山がセンターへ浅いフライを放つと、捕球を確認した三塁走者近本は本塁へGO。左足から突っ込んで1点をもぎ取った。前日24日には右膝に自打球を当てて途中交代していたリードオフマンが魂の激走を見せ、さらに二塁走者の糸原も三塁へ進んだ。同点となって押せ押せムードの中、サンズの決勝2ランが飛び出した。

開幕から先発投手陣の踏ん張りが快進撃の原動力になっていた。これまでは「先行逃げ切り」が目立ったが、この日は点を取り合うシーソーゲーム。最後に笑顔を浮かべたのは、今季初めて逆転勝ちした虎ナインだった。敗れた巨人と入れ替わって2位に浮上したヤクルトとは3ゲーム差。首位、そして貯金は11と2桁をキープしていても、指揮官は首を横に振った。

矢野監督 キープとは思ってないんでね。どんどん積み重ねていくことしか考えていない。目の前の試合を全力で取って、全員で戦う野球をやっていきます。

衝撃的な1発もあれば、流れを引き寄せる小技も走塁もある。セ界のトップを快走する矢野阪神が強さを見せつけた。【桝井聡】

▼阪神の逆転勝ちは今季初。今季12球団では最も遅い25試合目。両リーグ最多はヤクルトの8試合。なお阪神の昨季の逆転勝ちは、リーグ最多の27試合だった。