ドロップアウトした高校球児の「受け皿」として始まったクラブチーム「BBCスカイホークス」。高校生の選手たちは、日本航空高校の通信制課程で高校卒業を目指しながら野球を続けている。

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BBCスカイホークスの渡辺一生投手(17)は、ピンチでギアを上げた。「気合と一緒に投げれば、詰まらせることもある。相手は年上。気迫だけは勝たないといけません」。4月上旬、名門リーグに所属する大学生とのオープン戦に先発した。3回に2死二、三塁を招いたが、1球ごとに声を出し、最後は5番打者を143キロで空振り三振。最速は146キロを記録し、5回4安打2失点にまとめた。

神奈川・横浜出身。ボーイズで活躍し、県内の名門校に進んだ。将来を嘱望され、甲子園を目指した。だが、野球部になじめなくなる。2年生の昨秋、練習だけでなく、学校からも足が遠のいた。「自分でも、よく分からなかった。学校をやめようかなと思って」。そんな時、父親から「野球、続けるのか?」と問われた。「はい」。スカイホークスを探してきてくれた。

昨年11月に転校・編入し、今は日本航空高校の通信制課程で学びながら野球を続ける。「前の高校の時より練習しようという気持ちが出ました。ここでは自分でやらないと、どんどん後退していくだけなので」。降板後はファウルボールの回収係を務めた。戦況を見ながら、無人のスタンドで筋トレやダッシュを繰り返した。「球拾いだけじゃ時間がもったいない」。誰かに指示されたわけでもなかった。

最速148キロ左腕として、既に7球団が視察に訪れている。日本ハム坂本スカウトは「バランスがすごくいい。トップにしっかり入るので、腕が気持ちよく100%で振れる」。楽天部坂スカウトも「ガンだけじゃない、ベース上のスピードがある。期待して見ていきたい」と高く評価した。

渡辺自身、プロ志望を隠さない。甲子園に行きたい気持ちは、もちろんあった。ただ、こう考える。「甲子園が全てじゃない。甲子園に出る人がプロになっているわけでもない。中学の時から甲子園よりもプロやメジャーの舞台に立ちたい気持ちが強かった。それが、野球を続ける理由。目標があるのに、やめたら悔しい。悔いが残らないようにしたい」。

目標が明確だから頑張れる。「高校をやめ、父と母には迷惑をかけました。ここで頑張ってプロに行くことがモチベーションになっています」。さらに、やめた高校の監督への思いも抱く。最後は激励で送り出してくれた。「お世話になったのに、迷惑をかけてしまいました。その分、プロになって恩返しできたら」。

午後は学習支援センターでパソコンの前に座り、課題に取り組んだ。仲間たちと甲子園を目指す青春とは異なるが、それでいい。野球に限らない。人生、道は1つではないのだから。【古川真弥】