時の流れに身を任せず、巨人が節目の一戦の勝利をたぐり寄せた。

2000試合目の「伝統の一戦」でも、原辰徳監督(62)が伝統の重みをかみしめながら「静」と「動」を織り交ぜた采配を披露。初回にはダブルスチールを敢行。1点を追う5回には2死から不振に苦しむ丸佳浩外野手(32)の安打で好機をつくり、ジャスティン・スモーク内野手(34)が3号逆転3ラン。最後は執念の継投策で逃げ切った。通算成績は巨人の1094勝835敗71分けとなった。

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「伝統の一戦」の名にふさわしい攻防だった。2点リードの9回、猛虎の執念に2死満塁まで押し込まれた。だが、巨人もひるまない。野上が試合の幕を引くと、一塁側ベンチから巨人ナインが勢いよく駆けだした。歓声を出せないスタンドからの拍手が鳴りやまない。原監督は何度も何度も手を振った。「ジャイアンツのOBの方もタイガースのOBの方も、2000という数字をどういう思いで見ていらっしゃったか。両軍ともに死力を尽くした良いゲームだったと思います」と声のトーンを上げた。

1936年から85年間、対決を重ねてきた。時の重みをかみしめながら、指揮官はポリシーを貫いた。かつて「時間」というものをどうとらえるかと聞かれた際、笑顔で言った。「時の流れに身を任せられないよ」。成り行きに委ねず、動くと決めれば積極的に動き、耐えると決めれば勇気を持ってとどまり、勝利へとつなげてきた。

節目を託された一戦でもタクトに信念を乗せた。1点を追う1回2死一、三塁でダブルスチールを仕掛けた。一塁走者丸が挟殺される間に三塁走者梶谷が本塁に生還。「たまたま2人の走者がやったんでしょう」と笑いつつ、続けた。「チャレンジャー精神は勝負において非常に重要なポイント。そういうものを持った状態で試合に臨めているということ」。

耐えるべきところは「忍」を貫いた。不安定な先発サンチェスだったが「サンチェスに懸けたというところ。流れは、まだ来る」と7回1死まで続投させ、終盤の継投策につなげた。不振ながら起用し続ける丸も5回2死から安打で出塁し、スモークの逆転弾を生んだ。「目の前の勝利を目指すことに徹してやっております」。勝負師として時を操り、監督としては伝統の一戦での通算182勝目(155敗12分け)をつかんだ。

節目の一戦で迎えた歓喜の時。指揮官はすぐに、胸の奥にしまった。「まだまだ未来永劫(えいごう)続くでしょう。我々が2000回目という現場を預かっていることを幸せに感じて、また明日からの英気にする」。首位に立つライバルの背中を抜き去る時まで、気を緩めずに未来へと進む。【浜本卓也】

 

◆巨人-阪神戦2000試合 1戦目は36年7月15日に山本球場で行われ、タイガースが8-7で勝利。通算成績は巨人の1094勝835敗71分けで、2000試合を記録したのは阪神-中日戦の2001試合に次いで2カード目。巨人-中日戦はあと4試合で2000試合に到達する。

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▽巨人サンチェス(6回1/3、7安打3失点の粘投で3勝目をマーク) 悪くなかったが、もちろん簡単ではなかった。全球種を織り交ぜて、ゾーンの中で勝負することを心掛けた。