昨秋の悔しさをボールにこめた。既に慶大優勝が決まり迎えた最終週の早慶戦。慶大は2番手の生井惇己投手(3年=慶応)が2回2安打無失点で勝利に貢献した。昨秋の早慶2回戦は、優勝目前の9回2死で登板。蛭間拓哉外野手(3年=浦和学院)に痛恨の逆転2ランを浴び、優勝をさらわれた。その蛭間には安打を許したが、後続を断った。

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力強く拳を握った。生井は2イニング目の8回、2死満塁を招くも、早大・熊田を二ゴロ。「(先発の)森田さんから次につなごうと、熱い気持ちでマウンドに向かいました。0に抑え、意地は見せられました」と素直な思いを語った。

昨秋の早慶2回戦。交代直後の初球を蛭間に打たれた。「先輩たちの代を終わらせてしまった」。当時2年生の左腕には重すぎる現実。1週間ほど、食事も喉を通らなかった。どん底から救ってくれたのはエースだった。木沢(現ヤクルト)から「お前がくさってたらダメだ。見返せるよう、頑張れ」とハッパを掛けられた。「木沢さんはすぐに吹っ切って、プロに進もうとしている。自分は何をしてるんだ」。目が覚めた。

「あそこで時間が止まっているわけではないけど、何かを取り戻さないといけない」と強い意志で臨んだ。8回1死走者なしで、蛭間に昨秋と同じくスライダーを打たれ右前打。だが、後続を断った。「蛭間君には、まだ及ばない。いつかリベンジしたい」と新たに決意した。次の勝負へ、また時を刻む。【古川真弥】

▽慶大・正木智也内野手(4回に今季4号の同点ソロ。通算で2ケタ10本に乗せ) 「(昨秋の)敗戦を糧に練習してきました。今日の勝利で、チームとして成長を見せられました」