勝利のスパイスにこの男の奮闘は欠かせなかった。阪神糸井嘉男外野手(39)が、先制の3号2ランを含む2安打3打点3得点。不調のロハスに代わり13試合ぶりにスタメン出場したベテランが、オレを忘れるなとばかりに意地を見せた。

7番DHで出場し、0-0で迎えた2回1死三塁。平井の内角寄りフォークを捉え、2ランを右翼席に運んだ。「昨日満塁で三振した鬱憤(うっぷん)を晴らそうと気合入ってました」。先発は5月9日のDeNA戦以来で、今季3度目。調整が難しくても、結果を出す。しかもその3試合全てで本塁打の百発百中だ。

前夜0封負けした打線をよみがえらせた。本塁を踏むと、両手人さし指を突き上げ、近大の後輩佐藤輝をまねたポーズを披露。「輝ポーズ! もし打てたらやってやろうかなと思っていたので、よかったです」と盛り上げた。中継カメラには、佐藤輝の代名詞の「Z」ではなく、何やら複雑な文字を指で描き、ベンチの爆笑をさらった。

前日まで2試合連続でスタメンだった助っ人ロハスが、初本塁打を含む2安打後、15打席無安打と浮上の気配が見えない。糸井起用を決断した矢野監督も「やっぱり下位(打線)から(チャンスを)作れるというのも大きい」とたたえた。

開幕から慣れない代打家業が続く糸井は「今はグッチ(原口)の行動観察をしている。神様の」と明かす。代打で勝負強さを発揮する後輩にも学び、準備を続けている。「勝ったことが一番ですね。絶対に頂点に立ちたいので」。頼れるベテランは、そう言って球場を後にした。【桝井聡】

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