ソフトバンク今宮健太内野手(29)が、「日本生命セ・パ交流戦」の広島戦で球団通算9000号となる3号ソロを放った。6回に試合の均衡を破る先制弾。18年に球団通算8500号を放った男が、ダブルのメモリアル弾で球団史に名を刻んだ。ここ3年は、シーズン途中に故障離脱。今季も打率2割と本調子とは程遠いが、節目の試合で「持ってる男」の存在感を発揮した。

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南海時代から積み上げてきた9000本目のアーチは、今宮のバットから生まれた。0-0の6回。大瀬良のカーブをすくい上げ、左翼スタンドへ運んだ。

「(大瀬良が)非常にコントロール良く投げていたので、追っかけないようにだけ意識して打席に入った。しっかりためてとらえることができた」

巨人、西武に次いで、球団通算9000号に到達。球団史に名を刻んだことには「申し訳ないです」と謙遜しながら、苦笑いを浮かべた。

5回まで1安打に抑えられていた難攻不落の相手エースから、チーム唯一の得点。「見ての通りチームとして打つ方は苦労した。甘い球をすごく意識して入りました」と神経を研ぎ澄ませ、値千金のアーチを放った。実は18年6月5日のヤクルト戦(神宮)でも、球団通算8500号を打ったのが今宮。「どうなんですかね…その辺に関しては分からないです」と、またも苦笑い。慣れない本塁打の記録に、困惑した。

ここ3年は、シーズン途中で故障離脱。今季はスタメンを外れることもあるが、裏を返せば首脳陣の期待の表れ。工藤監督、小久保ヘッドコーチらは「今宮にけがをしてもらうと困る」と口をそろえる。離脱を避けるためにあえてスタメンを外し、コンディションを整える時間に充てさせた。工藤監督が「こんなに(首脳陣から)思われている選手はいない」と話したこともあった。

今宮も、全力で応える。「打率(2割)は最低の最低ですけど、そこよりもゲームでしっかりという意識を持っている。何でもいい。チームに貢献できるように」。今宮の記念弾で、勝てなかった。でも負けもしなかった。「しっかりカード勝ち越しできるように頑張ります」。この日一番の存在感を示した男は、次の勝利を見据えている。【只松憲】