米国帰りの「どすこい右腕」が、帰国19日目の“ぶっつけ登板”で国内642日ぶりの白星を手にした。米ジャイアンツ傘下3Aサクラメントから2年ぶりに巨人に復帰した山口俊投手(33)が、DeNA戦(富山)で復帰後初先発。地方球場のマウンドにも適応し、6回途中1失点で今季初勝利を挙げた。チームは今季2度目の4連勝で、敗れた首位阪神とのゲーム差は5に。先発陣に頼もしい右腕を加え、再び猛追態勢に入る。

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汗だくで万雷の拍手を浴びた。山口は2点リードの6回2死満塁、642日ぶりの日本での勝利投手の権利を持って2番手大江にマウンドを託した。空振り三振で切り抜けると、ベンチ前に笑顔で飛び出した。「約2年ぶりにジャイアンツのユニホームを着て、温かい声援の中で投げられることがすごく楽しかったです」。入団会見から「結果しかない」と言い訳の出来ない状況に自らを追い込んできた。シーズン途中の加入で感じる重圧も手にした1勝で吹き飛ばした。

自らの意思でぶっつけ本番を望んだ。5日の帰国後は自主隔離期間を送り、20日にジャイアンツ球場でシート打撃に臨んだ。それ以外は実戦形式での登板はなし。「もたもたしてる時間はないというのは、僕自身もあった。出来るだけ早く1軍のマウンドで結果として示したかった」という危機感が101球の熱投の活力になった。

立ち上がりは理想の投球からは程遠かったが、米国の経験値で立て直した。低めへの投球を意識して臨んだが、1回1死、DeNA柴田に、制球が定まらず、内角高め146キロ直球を右翼席に運ばれた。米国と異なるボール、マウンド、環境…。しかし、徐々に感覚を取り戻し、5回2/3を5安打1失点5奪三振にまとめた。「2回以降はいろいろな感覚も戻って来て、ストライク先行で攻められました」。夢半ばとなった挑戦で学んだ「ストライク先行の極意」を体現し、アップデートした“ニューどすこい”が躍動した。

得意の“地方巡業”から新たなスタートを切った。巨人移籍後は地方球場で6勝1敗。「やっぱり勝たないといけないチーム。巨人に初めて来て以来感じてる。いい緊張感にできてるのかなと思う」。巨人を離れた期間で約5キロ体重を落とし、瞬発的なパワーを増やして帰ってきた。「どすこい右腕」の巨人編第2章が快調に滑りだした。【小早川宗一郎】