西武松坂の引退を受け、1980年度生まれ最後の現役となったソフトバンク和田毅投手(40)がクローズアップされた。

担当歴がなく、深く知らない。ただ1日だけ、偶然の取材歴がある。

05年1月、和田は東京6大学でしのぎを削ったインディアンス多田野数人投手(24)、横浜松家卓弘投手(22=ともに年齢、所属は当時)と自主トレを行った。ベイスターズ担当になりたての記者は、東大からドラフト9位で入団した松家と取材を約束、そこに2人が現れた。

押さえていた公園内の野球場は、硬式球が使えずNGに。東大球場に場所を移したが、和田が「迷惑がかかっては悪い。万全を期した方がいい」と待ったをかけた。16年前は、母校の後輩とのキャッチボールも認められていなかった。

日の短い真冬。一瞬「今日は諦めようか」の空気が漂うも、和田はなんとしてもメニューをこなしたい様子だった。午後3時を回って、ようやく場所を確保。ジョグから入り、微妙に足の運びを変えながら、とにかくよく走っていた。

薄暗い中、丁寧なキャッチボールを終えると「自分が上ってきた階段が、高校から急に切れているようで明らかに不自然。早くこそこそせずに練習したい」と言った。「何かあったらいつでも」と教えてくれた携帯を鳴らしたことはないが、プロ3年目にして備わっていた大局の視点と芯、美しいランニングフォームが、今も印象に残っている。

「松坂世代」最後の現役が和田。個人的に納得感がある。【宮下敬至】