阪神青柳晃洋投手(27)が“凱旋(がいせん)登板”で、自己最多に並ぶ9勝目を手にした。次々やってくるピンチにも粘り抜き、118球の力投で6回6安打2失点。「オリンピックのせいで調子が悪くなったとか言われたくなかった。もし今回の登板とか良くなければ、選んでもらった(侍ジャパン監督の)稲葉さんとかにも悪い気持ちだったので。今回はすごく気合を入れて投げました」。国際舞台を経験した右腕は強かった。

ともに東京五輪で金メダルを獲得した梅野のミットに、迷いなく投げ込んだ。同点の5回1死一、二塁で迎えたのは、米国代表の4番オースティン。決勝トーナメント初戦で集中打を浴びたうちの1人だった。直球2球で追い込むと6球目、外のカットボールで投ゴロ。第1打席で中前打を許した強打者を勝負どころで打ち取った。

人生初の日の丸を背負った五輪。青柳は中継ぎで2度登板したが、どちらも失点を喫した。「僕の中ではすごい経験」。そう振り返るのは、実感から学んだことがあるからだ。どこで投げるか決まっていない中継ぎの難しさ。ブルペンで肩を作っても登板しないこともあった。「中継ぎのつらさ、いつ行くか分からないつらさというのを知った。僕が先発の時はなるべく役に立ちたい」。リリーフ陣が少しでも楽に準備できるように。先発としての責任感はまた強くなった。

自身7連勝で19年に並ぶ9勝目。矢野監督も「流れ的に嫌な流れやったから。ヤギがよく粘って、同点で止めてくれたから。久しぶりやけどいいピッチングしてくれた」とたたえた。

「テル(佐藤輝)のおかげで僕に勝ちがついたと思うので、このままたくさん打ってほしいです」。3打点のルーキーをはじめ女房役の梅野、懸命に守ってくれた野手陣に感謝した。心強い味方とともに、次はセ・リーグの頂点を目指す。【磯綾乃】