緊急昇格で、サヨナラ打ったばい!由宇から駆けつけたオリックス大下誠一郎内野手(23)が9回1死満塁からセンターの頭上を越す執念の殊勲打を放ち、首位に返り咲いた。

歓喜のウオーターシャワーを浴びると、中嶋監督と熱い抱擁を交わした。

「最高です!自分が決めるんやっちゅうふうに、思い切りフルスイングしました!」

福岡・北九州市出身。思い出のほっともっと神戸のお立ち台で、フラッシュライトを浴びた。昨季9月15日の楽天戦。プロ初打席でプロ初安打となるプロ初本塁打を放った。あの日、ガムシャラに駆け抜けたダイヤモンドを、再び全力疾走してみせた。今季は2軍生活が長かったが「自分にうまさはいらない。ガムシャラに泥臭く。全力プレーと根性です」。熱いハートの持ち主は、大阪・舞洲の打撃マシンと向き合う日々を送ってきた。

ヒーローは、“代役”だった。この日はジョーンズがワクチン接種の副反応のため、特例2021で出場選手登録抹消に。代替選手として、大下が緊急昇格した。「(ファームの)試合の4回表ぐらいに。すぐ準備してほっともっとに行ってくれと」と告げられ、1軍戦へと急いだ。

荷物を全部自分で持ち、新神戸駅到着は17時9分。タクシーに飛び乗り、50分ほどで球場入り。「ご飯食べてゆっくり来ていいと。着替えて、1回裏にベンチに入った」。2点を追う8回に代打起用され、今季1号ソロの千金弾。左翼席への着弾を見届け、ほえた。

劇的勝利後、大下と抱き合った中嶋監督は「元気と一緒に勢いまで持ってきてくれた。出来過ぎ」と褒めた。首位攻防戦に勝ち、首位再浮上。オリックスが、1歩ずつ突き進んで行く。【真柴健】

◆大下誠一郎(おおした・せいいちろう)1997年(平9)11月3日、福岡県生まれ。小倉ボーイズ時代に日本代表として世界大会V。白鴎大足利2年のセンバツ(対東陵)では、春夏を通じ甲子園初の1試合4二塁打を放った。白鴎大を経て19年育成ドラフト6位でオリックス入団。20年9月15日楽天戦で1軍デビュー。171センチ、89キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸840万円。