<阪神5-3ヤクルト>◇8日◇甲子園

阪神小川一平投手がプロ初勝利を記録した。

   ◇   ◇   ◇

小川の恩師、東海大九州・南部正信監督(62)も成長ぶりに目を細めていた。「大学やプロ1年目と表情が変わりましたね。いい顔になった」。神奈川の横須賀工から「田舎で大きくなれ」と連れてきた熊本。小川が入学した直後の16年4月、震災が起こった。

寮のある南阿蘇村も震度6強を計測し、大学は1カ月休校。実家に戻った小川は東京・渋谷のスクランブル交差点で募金協力を呼びかけるなど、ボランティア活動を行った。熊本に戻った後もグラウンドは復旧せず。系列高校を借りるため、十分な練習時間は確保できなかった。「練習できないからこそ、考えてうまくなるためにいろいろヒントが欲しかったんだと思います」。貪欲の原点だ。

現在88人の部員がいるが、グラウンドの完成は23年4月まで待つ。現在は高校生が使わない午前中と夜の2班に分かれて練習している。今も厳しい環境で努力する後輩たちにとって、小川の姿は支えとなるはずだ。【阪神担当=石橋隆雄】

◆小川一平(おがわ・いっぺい)1997年(平9)6月3日生まれ、神奈川県出身。横須賀工では甲子園出場はなし。東海大九州1年時に熊本地震に被災。19年ドラフト6位で阪神入り。1年目の昨季は1軍公式戦21試合に登板し0勝0敗、防御率4・71。183センチ、82キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸950万円。