神戸の夜に、オリックスナインの声が漏れた。同点の9回2死一、二塁。紅林のライナーが三塁手三木のグラブに収まると、一塁側ベンチは天を仰いだ。

ベンチ入り野手を全員起用する総力戦に中嶋監督は「あと35試合かな。こういう(僅差の)ゲームになると思う。どう拾っていけるか」と懸命に前を向いた。

カード勝ち越しまで、あと一息だった。1点リードの9回のマウンドは守護神、平野佳に託した。だが、先頭の荻野に左翼席へ8号同点ソロを被弾。指揮官は「打った方が打った方なので…」と相手をたたえた。平野佳は8月13日ロッテ戦(ZOZOマリン)から登板8試合連続で無失点に抑えていた。信頼して最終回を託した背番号16を責めることはなかった。

この日は先発田嶋が今季最長の8回を116球3安打1失点と好投。最速は154キロを計測し、10三振を奪う力投で、指揮官は「よく投げました、本当に。素晴らしいピッチングだった」と褒めた。

ロッテとの首位攻防戦は1勝1敗1分け。僅差で首位の座は譲っているが、1試合で返り咲くことが可能だ。残り35試合。険しい道のりを、着実に歩む。【真柴健】

▽オリックス田嶋(8回3安打1失点も6勝目ならず)「フォームのバランスもよく、落ち着いてリズムよく投げられていた。フォークがいつもよりチェンジアップ気味に抜けて、より効果的に使えていた」