日本ハムのエース上沢直之投手(27)が3年ぶり2度目の2桁勝利に王手をかけた。西武17回戦(メットライフドーム)は序盤から威力十分の直球を軸にストライク先行でゲームメーク。若手投手の奮闘からヒントを得て、勇気を持って勝負を仕掛け続けて8回5安打1失点の好投で9勝目。先発の軸として「マスト」と位置付ける10勝到達へ、力強い内容で1歩近づいた。

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上沢が投じた131球目も、ベース板の上をしっかり通っていた。自らに課した、シンプルだけど難しい投球スタイルを完遂した瞬間に「うりゃぁ!」と雄たけびを上げていた。2点リードの8回2死一、二塁。源田に対してカウント2-2から選んだ勝負球はストレート。気持ちがこもった外角低めへの147キロにバットが空を切った。8回5安打1失点。西武打線をねじ伏せて9勝目だ。

上沢は笑顔で振り返った。「ベース板の上にボールを通し続けて、振ってもらって、そこから先はもう…知らんっていうか」。力強いボールをストライク先行で投げるのがテーマだった。最近は序盤で球数が増え、7回までしか投げられていなかった。多彩な球種、制球力もあるだけにストライクゾーンのギリギリを巡る攻防も多かったが、見直すきっかけがあった。

上沢 最近、立野とか若いピッチャーが先発して、どんどんストライク先行で投げているのを見て、思いきって勝負しなきゃダメだなと改めて気付かされた。

打たれるのは怖いが、恐れていては求めるエースになれない。若手の姿から刺激を受けてたどり着いた境地が「もっと打たれることを怖がらずに、結果を恐れずにやんなきゃ」。初回先頭の金子には10球粘られたが、9球が直球でボール球も2球だけ。自分のボールの力を信じて、ストライクゾーンでの勝負を続けて結果だけでなく、納得の内容も勝ち取った。

若手とひと味違うのは、思い切りの良さだけではないところ。冒頭の源田との勝負では、6回に適時三塁打を浴びた場面を布石にした勝負を仕掛けていた。

上沢 前の打席で打たれていたのが変化球。ピンチの時の決め球は変化球のイメージがあると思ったので、変化球が来るだろうというカウントで、あえて真っすぐ。しっかり投げられたのはよかった。

これで18年以来の2桁勝利に王手をかけた。「1年間、投げさせてもらっている以上、そこはマストだと思う」と、平然と言った。そのためにも「次の試合も、しっかりベース板の上で勝負できたら」。言葉に自信がこもっていた。【木下大輔】