2位阪神が3位巨人との「伝統の一戦」を引き分けに持ち込んだ。5-6の9回にサンズの適時二塁打で追い付くと、最後の守りは申告敬遠で満塁策を取った。1死で丸の三遊間のゴロを中野がダイブ捕球から本塁封殺。2死から中田のライナーを再び中野が好捕した。一打サヨナラの場面から2試合連続ドロー。首位ヤクルトと0・5差となったが、この「土壇場力」はこの先に生きてくる!

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ルーキー中野がスーパープレーで絶体絶命のピンチをしのいだ。9回。守護神スアレスが2戦連続でつかまり1死二、三塁。ベンチは亀井を申告敬遠し、満塁策で丸との勝負を選んだ。前進守備の三遊間へ強いゴロが飛ぶ。抜ければサヨナラ負け-。身長171センチの背番号51は横っ跳びし好捕すると、すぐに起き上がって本塁へワンバウンド送球。三塁走者をアウトにした。「1点与えたら終わり。自分自身も割り切って守ることができた。(坂本)誠志郎さんがいいカバーをしてくれた」。一塁側へそれた送球を坂本が目いっぱい足を伸ばしてキャッチ。間一髪のタイミングで原監督からリクエストを求められたが、ビジョンに流れるリプレー映像でもしっかり本塁から足を離していなかった。

中野の今季15失策は遊撃手でリーグ最多。それでも「とにかく攻める守備を心掛けていました」と打球に食らい付いた。続く中田はスアレスの162キロに詰まり、変則回転のライナーを再び中野が体勢を崩しながら捕ってゲームセット。矢野監督は「みんな、必死の姿で最後までやり切ったことが引き分けにつながった。勝ちたかったけど、よくやってくれた」とナインをねぎらった。

チームは打線が湿り、先発陣も思うように投げられず、22日に首位陥落。前日23日の中日戦ではスアレスがセーブに失敗して引き分けた。「みんなを今すぐ調子を上げさせる力って、残念だけどないんだよ」。特効薬がない中、矢野監督はこの日の練習前にナインを集めて訴えた。「全員主役になるようなチームになれたらいいなと。オレらはチャレンジしてこそ。今やれることを。そういうのがつながったものがオレたちの野球だから」。就任から3年間貫く「全員野球」という原点を思い返そう-。9回の攻守には各自のやれることが詰め込まれていた。

最大3点差を追い付き、サヨナラ負けのピンチも乗り切り、38年ぶりに2試合連続で引き分けた。不屈だったその戦いぶりを残り25試合となったペナント争いに注ぎ込む。【石橋隆雄】