広島九里亜蓮投手(30)が、プロ8年目で初の2桁となる10勝目に到達した。今季2戦2敗と苦にしていた阪神戦に先発し6回2失点。幾度と訪れたピンチを最少失点でしのぎ、節目を迎えた。気迫の投球でチームを今季最長タイの5連勝と2カード連続勝ち越しに導いた。

  ◇  ◇  ◇

九里が欲しかった勲章を、ついにつかみ取った。17年に9勝、18年からは3年連続で8勝にとどまった。今季も王手をかけてから2試合連続で足踏みしたが、三度目の正直で初めて2桁勝利を挙げた。ヒーローインタビューでは「率直にうれしいですけど、いつも野手の方が守ってくださって、打ってくださってついた勝ちだと思う。本当に感謝しています」とチームメートをたたえた。

気迫で乗り切った。4、5回と1点ずつ失うも、決して追加点は許さなかった。圧巻は6回。1死から単打2本と一塁手林の失策も絡み、満塁のピンチを迎えた。しかし梅野を内寄りの143キロ直球で一邪飛に封じ、代打原口は外角変化球で中飛にねじ伏せ、右拳で渾身(こんしん)のガッツポーズを決めた。右腕は「しっかりとゾーンの中で勝負して、その結果0点に終わってよかったです」と淡々と振り返った。

ピッチングの根本から見直した。「体の使い方」を学ぶべく、昨オフには前田健太、大瀬良らが師事する手塚一志トレーナーが運営する広島市内の施設「上達屋」に初めて足を運んだ。動作解析を行い、フォームの修正に取り組んだ。キャッチボールから徹底して軸足の粘り、下半身主導を意識し、テークバックを昨季からよりコンパクトな上げ方に変えた。「去年まで(体が)横回転になっていたのを、縦回転に近づけることができた」。春季キャンプのブルペンで異例の1日347球を投げ込むなど新フォームを体にたたき込み、今季の躍進につなげた。

魂を込めた熱投で、チームを今季最長タイの5連勝と2カード連続の勝ち越しに大きく貢献した。今後に向けて「残り試合は少ないですけど、しっかりと自分の投球をして、1試合でも多くチームに勝ちがつけられるような投球ができるように頑張りたい」と引き締めた。節目の到達にも満足せず高みを目指していく。【古財稜明】

▽広島佐々岡監督(九里について)「先発をやっている以上は2桁を目標にやっている。(達成は)遅いぐらいだと思う。もっと早く(2桁)勝てると思っていた。10勝したのは大きな自信になると思う」