キャプテンがラストスパートに入った。ヤクルト山田哲人内野手(29)が、3打数2安打3打点1本塁打で連勝に貢献した。直近10試合では、11安打16打点5本塁打と絶好調。年下の同僚村上への憧れを口にしつつも、自分のスタイルを貫き、首位を走るチームを支える。2位阪神との差を1でキープし、最短で5日にもマジック14が点灯する。6年ぶりの優勝へ向けて、視界良好だ。

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山田は高々と上がる打球を見ながらゆっくりと一塁へ向かった。1点リードの6回無死一塁。2球目の高め137キロ直球を振り抜いた。左中間席へ運ぶ33号2ラン。「追加点が欲しいところで青木さんがいい形で出塁してくれて、チャンスで打てて良かった」と安堵(あんど)。広島を突き放し、2連勝に導いた。

持ち前の長打力を武器に、今季は球団史上3人目の5度目の30号に到達した。180センチ、76キロとプロでは大きくない体格。小学生時代から“かっこいい”スイングを追求してきた。「シンプルに前に突っ込まないとか、本に書いてある誰もが分かるようなことを意識しながら。見た目はかっこよく、それだけをやっていた。かっこよかったら間違いないかなと」と振り返る。野球を続けていくうちに気づいた本塁打のコツは“タイミングとポイント”。「ポイントが前の方が飛ぶ。なので前」と説明。より力が入る場所で打つ技術を高めてきた。今季33発のうち、逆方向へは3本のみ。引っ張って量産してきた。

一方でボールを長く見られない分、打率は残しにくい欠点がある。最善は引きつけての本塁打。それを難なくやってのける4番村上がいる。「そこまで僕はパワーがない。うらやましいというか、僕もそうなりたいとは思う」と、年下のスラッガーの能力を素直に認める。ただ、遠くに飛ばすだけが野球ではない。7回無死一、三塁ではつなぎの姿勢を見せた。2ストライクから高め157キロ直球を力まずスイング。中犠飛で追加点をもたらした。自分で決めることも、つなぐこともできる自在さで、チームをけん引する。

15年の優勝経験者だが、当時の優勝争いの空気感と現在を比べ「なんか違う。どう違うんだろう。雰囲気は一緒なのかもしれないけど、自分が違うかもしれない」と首をかしげる。6年前は主軸とはいえ若手だった。今季は主将としてチームをまとめる。優勝へ向けて、無意識の責任感が、今の山田を突き動かす。【湯本勝大】

▽ヤクルト中村(4回2死満塁で中前に決勝の2点適時打) なんとかカバーしようという気持ちで打席に入った。大振りせずコンパクトに打つことができた。

▽ヤクルト・サンタナ(6回1死一、二塁で右翼へ13号3ラン) ここ最近、思い通りのバッティングができていなかったが、久しぶりに良い感覚で打てた。チームの勢いもあるからね。

▽ヤクルト高梨(7回1/3を4失点で4勝目) 野手のみなさんに感謝ですし、中継ぎの皆さんを休ませてあげようという気持ちで投げたが、迷惑をかけてしまった。