悔しさを、白球にぶつけた。楽天渡辺佳明内野手(24)が7日、ロッテ24回戦(ZOZOマリン)の9回にロッテ守護神の益田から値千金の決勝打を放った。今季は開幕1軍入りも4月下旬からファーム暮らしが続いた。9月上旬に再昇格。持ち前の打棒を発揮し、同下旬からスタメンに定着した。2位ロッテに3ゲーム差と詰め、残り14試合で首位オリックスとは4・5ゲーム差。勝負強さが売りの3年目が、逆転優勝へ望みをつないだ。

   ◇   ◇   ◇

魂の声が、ボールに届いた。渡辺佳が打った瞬間に叫んだ。打球は後方へ追う前進守備の左翼荻野のグラブをかすめて落ちた。同点の9回2死二塁。益田の外角直球を捉え、決勝点を奪った。「ストレートもシンカーもすごくいい投手。可能性のあるストレートを打ちました。チャンスだったので何とかいいところで打ちたいなと思っていたので、その気持ちが伝わったかなと思います」。二塁上で右拳を力強く挙げ、守護神に天を仰がせた。

輝く瞬間を待ち続けていた。3年目の今季は開幕1軍入り。8試合でスタメン起用されるも期待に応えきれず、4月22日に出場選手登録を抹消された。再昇格は9月4日。4カ月半、日々太陽の日を浴びながら、バットを振り続けた。「すごく悔しい気持ち。すぐに上がりたいという気持ちもあって、焦りもありましたが、自分のやれることをしっかりとやりながら上がれるのを待ちました」。

打撃の形を一から見直した。「開幕当初は軸がぶれたり、自分のスイングができなかったことが多々ありました」。大村ファームディレクターから教わった、ヤクルト青木を参考にしたレベルスイングを継続。「打席内でその場で回って打ったり、決め球を自分の中で整理して打席に入ることをやってきました」。5日ソフトバンク戦ではプロ初の4安打を放つなど、9、10月は36打数14安打、打率3割8分9厘と絶好調。地道に取り組んできたことが成果に表れてきた。

石井GM兼監督も「なかなか本来の積極性でなかったけど、この終盤にきて、スタメンで使ったときに自分の居場所を確保しようと必死になっているのが今はいいと思います」と称賛した。得点圏打率が1年目の19年は3割9分3厘、昨季は4割5分。今季は1割6分7厘にとどまるが「あんまり気にしなかったので、今日は今日という気持ちで打ちました」と意に介さない。シーズン最終盤の今こそ、本領発揮だ。【桑原幹久】