怪物のためにイチローがやってきた! 今季限りで現役引退した松坂大輔投手(41)の引退セレモニーが4日、西武のファン感イベントで行われ、イチロー氏(48)がサプライズ登場した。日米またにかけて活躍した同志であり、ときには好敵手として名勝負を繰り広げた投打のビッグスター2人。短いやりとりでねぎらいを受けた松坂が、万感の思いでユニホームを脱ぎ、マウンドに別れを告げた。

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自分のために会いに来てくれたことを思うと、こらえていた涙があふれた。松坂は一塁側ダッグアウトの横から、スーツ姿で現れたイチロー氏から花束を受け取った。その直前、大型画面にマリナーズのユニホーム姿で登場。「大輔、どんな言葉をかけていいのか、なかなか言葉が見つからないよ。だから僕にはこんなやり方しかできません。許せ、大輔」。画面が消えると同時に本人が登場するサプライズだった。

プロ入りした1年目の99年から、勝負が始まった。初対決の5月、ルーキーにして3打席連続三振に打ち取った。「自信が確信に変わりました」。18歳の新人が名言を残した。その年7月の再戦では通算100号弾を浴びた。力と力、技と技、意地と意地がぶつかり合う勝負だった。イチロー氏がメジャーへ渡った6年後、07年に米国での初対決。初球カーブで意表を突いた。直球勝負の裏をかき、4打席連続無安打。勝負に徹した。一方で06、09年のWBCでは日本代表としてともに戦い、2大会連続で世界一に輝いた。

いくつもの勝負を演じてきたホームベース上で、スーツ姿のイチロー氏にねぎらわれた。「お疲れさまでした、長い間よく頑張ったね、その言葉を聞いたときに一気に涙が出ましたね」。短いやりとりにも、込められる思いは積み上げてきた2人にしか分からない。さっそうと立ち去るイチロー氏の後ろ姿を見届け、思わずこぼれた。「最後まで本当かっこいいな」。ずっと追い掛けてきた背中だった。

23年間に及ぶ現役生活にピリオドを打ち、ファンにも別れを告げた。将来的に指導者として戻ってくることに期待する声もある。「まだまだ勉強しなくちゃいけないことがあるので、声がかかるまで、というかかかるかも分からないですけど、それまで勉強したいなと思います」。平成の怪物は現役に区切りをつけ、新たなステージに突き進む。【栗田成芳】