ヤクルト高津臣吾監督(53)が、正力松太郎賞に選出された。チームを2年連続最下位から立て直し、6年ぶりのリーグ優勝と20年ぶりの日本一を達成した手腕を評価された。

球団では78年広岡達朗監督、93年の野村克也監督、97年の古田敦也、01年の若松勉監督に次ぐ5人目。「僕がいただきましたが、チームのみんなが導いてくれた。その賞を代表していただき、胸を張っていきたい」と周りに感謝した。

恩師の教えがあった。20年2月に亡くなった野村克也氏と最後に会ったときには「しっかり頭を使え。最下位のチームなんだから」と声をかけられた。高津監督は「その言葉通りに信じてやってきたつもりだし、僕を支えてくれた大きな言葉」とうなずいた。戦術はもちろん、選手を鼓舞する方法も考え、恩師と同じく言葉で選手を導いた。受賞理由の1つに、高津監督の“言葉の力”が挙がった。今季チームの合言葉となった「絶対大丈夫」や、「前のめりに戦っていこう」など。常に前向きな言葉で背中を押してきた。

教えを胸に、指揮官含め全員で一枚岩になって戦ったからこそ、歓喜の1年となった。「(野村氏も)さすがによくやったと言ってくれると思う。でもその前に、一言二言つくでしょうね。『フン』は言いますね、第一声で」と表情を崩した。11日には恩師をしのぶ会が開かれる。リーグ優勝に日本一、正力松太郎賞…。また1つ報告することが増えた。【湯本勝大】

◆正力松太郎賞 日本のプロ野球の発展に功績を残した正力松太郎氏を記念し、1977年(昭52)に制定。プロ野球界に貢献した監督、コーチ、選手、審判員を対象に、選考委員が選出。受賞者の最多はソフトバンク工藤監督の5度。04年米大リーグのシーズン最多安打記録を更新したイチロー(マリナーズ)、13年に24勝0敗でチーム初優勝に貢献した田中将大(楽天)に特別賞が贈られた。賞金500万円。

◆選考委員 王貞治(ソフトバンク球団会長)杉下茂(野球評論家、解説者)中西太(同上)山本浩二(同上)門田隆将(ジャーナリスト)