日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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プロ野球は来シーズンから入場制限の全面緩和を想定している。春季キャンプもファンを入場させる。だがコミッショナーの斉藤惇が集客を前提にする意向を示した後、憎き新規変異株オミクロンの拡大で、なんだか怪しくなってきた。

各球団が気をもんでいるのが、外国人選手の入国問題だ。今季は助っ人がそろった阪神のような球団と、来日が大幅に遅れたDeNAなどの球団との戦力差は歴然とした。外国人の動向はそのままチームの順位に大きく影響するから深刻だ。

そもそも11月頃までは門戸が完全にクローズされているわけではなかった。ワクチン接種の条件を満たすのは当然として、例えば留学生、配偶者が日本人のケースなど、人道的配慮で“例外”とされた。感染者の急減も光明だったはずだ。

しかし、その矢先のオミクロン登場で、首相の岸田文雄から新規入国の原則停止が明らかにされた。プロ野球、Jリーグをはじめ、アスリートの入国に関しても政府関係者は「不透明と言わざるを得ない」と打ち明ける。

別の関係者は「北京五輪、W杯など国際大会、1月に開幕するラグビーの新リーグ(ジャパンラグビーリーグワン)、いわゆる公益性のあるイベントと認められたものに関する入国は厳格に運用しようということだったが、それも現在はほとんど閉じられている」という。

「ここにきて日本も増加傾向だが、海外では恐ろしいほど感染者がでている。その国からそういう人を入国させれば、我が国は大変なことになりかねない。(新規入国を)容易に認めるわけにはいかない」

今後は官邸、内閣官房らの判断だろうが、結局はオミクロン株の感染状況がいかなるトレンドをたどるかにかかっている。政府筋の話を総合すると、入国制限が緩和されても、まずは「公益性」の高い大会、イベントが優先、ついで「興業」が認められるといった見方が強い。

今年最終のJリーグと共同開催の「新型コロナウイルス対策連絡会議」の会見で斉藤は「よほど新しい現象がでてくれば考えますが、今年のルールを大きく変えようとは思っていない」と答えたが、それ以降の事態は刻一刻と変わっている。今後のかじ取りが注目される。

野球、サッカーの両組織は興業にあたるが、スポーツ大規模イベントでもコロナ禍で公式戦をやり抜いた実績がある。「来年こそ」の思いは強い。先が読めない状況で楽観視はできない。これまでの経験を生かしながら、英知を結集し、球界が一丸になって立ち向かう年にしたいものだ。(敬称略)