阪神が来年ドラフト1位候補の花巻東(岩手)佐々木麟太郎内野手(1年)を2年間、密着マークすることが5日、分かった。エンゼルス大谷を育てた同校の佐々木洋監督(46)の長男で、すでに高校通算50本をマークする左のスラッガーだ。出場が確実な今春のセンバツ(3月18日開幕)では、本拠地甲子園でどんな打撃を見せるのか、スカウト陣がそろってクロスチェックする。

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高校球界に登場した新スターの成長を、阪神スカウト陣が密着態勢で見守る。昨秋、佐々木麟は「3番一塁」で出場した昨秋の明治神宮大会で強烈な全国デビューを飾った。準決勝までの3試合で10打数6安打で9打点、2本塁打。投手方向へ1度バットのヘッドをグッと入れ込み、鋭いスイングで豪快にひっぱたく。183センチ、117キロの大きな体で、メジャーリーガーのようなド迫力打法で一気に主役に躍り出た。

準決勝の広陵(広島)戦では、3点を追う8回、高め直球を右翼席へ高々と同点3ランとなる高校49号アーチをかけた。試合は競り負け、優勝した大阪桐蔭との対決は幻になったがその後、センバツVの東海大相模(神奈川)との練習試合でも1本放ち、1年生ながら高校50発をマークした。

球団関係者は「そりゃあモノはいいよ。順調にいけば村上(ヤクルト)みたいになってくれる。それを想像させるような選手」と、昨季セ・リーグMVPを獲得したスラッガーに匹敵する素材と絶賛。「1年であのスイングにとらえ方。清宮(日本ハム)よりも打撃が柔らかい」と評価する。同じ左の大砲清宮は早実で高校111発を放ったが、1年時は22本だった。佐々木は今後2年間で、どれだけ本数を伸ばすのか。来年のドラフトまで、阪神スカウト陣が密着マークする。

「これから体は絞らないといけないと思うけど、技術的にどこまで上がってくるか。ひと冬越えてどうなるか楽しみ」。球団関係者は、出場確実な春のセンバツでの姿を楽しみにしている。甲子園デビューでいったいどこまで飛ばすのか。地元球団の地の利を生かし、多くのスカウト陣、関係者の目でしっかりとクロスチェックを行う。

指導するのはエンゼルス大谷を育てた父の佐々木洋監督。その長男は大谷メソッドの指導を受け、日本を代表する打者になる資質を秘める。23年ドラフトの超目玉選手で1位指名すれば他球団と競合必至だ。だが、阪神が獲得できれば、ミスター・タイガース掛布のような左の高卒スラッガーが誕生し、佐藤輝と並べば破壊力満点打線が形成できそう。まずはセンバツでの大暴れに熱い視線を送る。

<佐々木麟太郎(ささき・りんたろう)>

▼生まれ 2005年(平17)4月18日生まれ、岩手県出身。

▼由来 父の花巻東・佐々木洋監督は社会科教諭で日本史を担当。父が尊敬する勝海舟の幼名・通称「麟太郎」から命名した。本人も「小学校まで由来は気づかなかったけど、この名前に誇りを持っています」。

▼球歴 幼少時から江釣子スポーツ少年団で野球を始め、中学時代はエンゼルス大谷の父徹さんが監督を務める金ケ崎リトルシニアでプレー。中学時代の通算本塁打数は本人いわく「20本後半から30本ぐらい」。メジャー歴代最多の762本塁打を誇るバリー・ボンズの打撃フォームを参考に、中学2年の冬にフォームを作り直し、中3年から量産態勢に入った。花巻東では1年春からベンチ入り。

▼中学時代は二刀流 金ケ崎リトルシニア時代は投手と三塁が中心。3年時に最速137キロを計測。変化球はカーブ、スライダー、フォークの3球種を持つ。

▼大フィーバー 明治神宮大会準決勝では、佐々木麟を見ようと花巻東が出場する午前8時30分開始の第1試合に7000人のファンが集まった。各社人数制限のある報道陣も134人と異例の数だった。

▼サイズ 183センチ、117キロ。右投げ左打ち。

◆この日の佐々木麟 花巻神社で必勝祈願を行い、花巻東グラウンドで練習始めに臨んだ。「『今年こそ日本一を取りたい。よろしくお願いします』とお祈りしました」。中学2年から患う両肩の胸郭出口症候群が高校入学後に悪化。血流が遮断され肩のしびれや腕が上がらない状態が続いた。昨年12月に入院し手術。肩を少しずつ動かすことからリハビリを始め、この日、久しぶりにバットを握った。「センバツに出場できたら間に合わせます」と力強かった。