開幕ローテ候補に急浮上! 阪神ドラフト3位の150キロ左腕、桐敷拓馬投手(22=新潟医療福祉大)が、対外試合デビュー戦で1回を完璧に封じた。20日、練習試合の中日戦(宜野座)で3回から2番手で登板し、威力ある真っすぐとキレ味鋭い変化球で3人斬り。中継ぎ起用が有力視されていたが、圧倒的な投球の連続で首脳陣が先発候補に上方修正した。同じ左腕で、今年から日刊スポーツ評論家に就任した阪神岩田稔コミュニティアンバサダー(CA、38)も現地で視察し、快投を絶賛した。

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桐敷は落ち着き払っていた。「投げる前は緊張したんですけど、マウンドに立ったらそんなに緊張はなかったです」。対外試合デビューでも一切表情を崩すことなく、中日打線を翻弄(ほんろう)。新人離れした堂々の立ち居振る舞いで、いとも簡単に3者凡退にねじ伏せた。「初めてにしては良かったです」と充実の表情で振り返った。

左打者3人に対し、内角をズバズバ攻め込んだ。先頭岡林は内角直球で中飛。京田は内角2球で追い込み、最後は外角低めスライダーで体勢を崩させて空振り三振。山下は真ん中低めのツーシームで二ゴロに仕留めた。「課題の左打者への内角に投げることを意識してやれて、今日はそれができました」。最速148キロの直球を軸にキレ味鋭い変化球を交え、テンポよく11球で圧倒した。

完璧な投球に首脳陣の評価は赤丸急上昇。15日のシート打撃でも5人にヒットを許さず、勝利の方程式候補に挙がってきたが、金村投手コーチは「1イニングじゃもったいない。先発じゃないかな」と“上方修正”。一躍、先発候補に指名した。「マウンドさばき、組み立て方だったり、しっかり仕上がっている。(ローテに)入れる力はある」。同じ左腕で先発挑戦中の及川のアピール不足もあり、新人左腕の安定感に白羽を立てたようだ。

実戦登板前から「通用する」と予言してきた矢野監督は「あれぐらいやるやろうなと思っているから、びっくりもしない。それがすごいんだけど」と本物を確信。「抑え方の中身がしっかりしている。先発でも中継ぎでもどこでもいける」とうなずいた。次回登板は2イニングの予定。「ここは三振を取るとか、場面に応じたピッチングが重要。意識してやっていきたい」と引き締めた。

「自信にもなるかなと思うんですけど、まだ最初なので。いい時はいいですし、悪い時は悪いなりに抑えるというのは自分の中で意識してるところなので」。開幕まで残り約1カ月。昨秋のドラフト指名後に「完全試合」も達成したキレキレ左腕が、先発争いに殴り込む。【古財稜明】

▽中日金子スコアラー 毎回いい。新人は初めての実戦、対外試合で思うことがあると思うけど、そういうのを全く感じさせない。(京田を三振させたスライダーは)曲がりが大きかったですね。

▽巨人志田スコアラー 落ち着いて投げられているし、良いピッチングをしてる。(先発、中継ぎ)どこでも使えそうな雰囲気がある。

▽DeNA新沼スコアラー 左の内角に投げられるのはすごい。何でもストライクを取れそう。すごく落ち着いていて、大人びた雰囲気がある。

▽広島岩本スコアラー 球自体の強さもありますし、変化球でストライクが取れる。なかなか崩すのが難しいかなと思わせる良いピッチング。このままいくと間違いなく(開幕1軍に)残る。注意していかないといけないピッチャーですね。

▽ヤクルト石堂スコアラー 落ち着いてどんな球種でもカウントを取れるし、勝負もできるので、ある程度計算はできるんじゃないか。(スライダーは)バッターもてこずっていた。良い感じの変化だし、右も左も厄介になってくると思う。

◆桐敷拓馬(きりしき・たくま)1999年(平11)6月20日生まれ。埼玉県鴻巣市出身。屈巣(くす)小1年時に屈巣ニュースターズで野球を始め、川里中では行田リトルシニアでプレー。本庄東では1年夏からベンチ入りし、同年秋からエース。甲子園出場なし。新潟医療福祉大では1年秋にリーグ戦初登板。昨秋ドラフト指名直後の10月16日の平成国際大戦ではリーグ新19奪三振で、関甲新学生リーグ初の完全試合を達成。阪神入団の契約金は6000万円、年俸1000万円。178センチ、90キロ。左投げ左打ち。(金額は推定)

<阪神の主な新人先発左腕>

▼江夏豊 大院大高から66年一次ドラフト1位で入団。高卒1年目ながら、67年は29試合の先発を含む42試合に登板。いきなり12勝(13敗)を挙げた。

▼山本和行 亜大から71年1位で入団。72年は先発12、救援16試合に登板。3勝(5敗)だった。82、84年は最優秀救援投手。80年には主に先発で15勝を挙げた。

▼湯舟敏郎 本田技研鈴鹿から90年1位で入団。91年は登板23試合中18試合に先発して5勝(11敗)を挙げた。92年6月の広島戦(甲子園)でノーヒットノーランを達成した。

▼遠山昭治(名前は当時) 八代一から85年1位で入団。86年は24試合先発して8勝をマーク。移籍、野手転向を経て阪神に復帰後は、中継ぎで活躍した。

▼伊藤将司 JR東日本から20年2位で入団。21年は22試合に先発し江夏以来となる新人左腕2桁勝利10勝(7敗)の大活躍。新人王は逃したが、同僚の佐藤輝らと新人特別賞を受賞した。