笑顔はなかった。楽天涌井秀章投手(35)が5回3失点で今季初勝利を挙げた。

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昨年6月4日広島戦以来の白星だったが、変化球をコースに収められず、終始苦しい投球。4回以外は得点圏に走者を許した内容に、納得出来なかった。「またポジションを確立しないといけないので、今日みたいな投球だとチャンスはなかなか巡ってこない。しっかりしたい」と厳しい表情で引き締め直した。

今季はキャンプ2軍スタート。開幕も2軍で迎えた。「開幕1軍じゃなかったのが18年目で初めてだったので、複雑な思いはありました」。悔しさをかみしめながら、ひたむきに汗を流した。己とは厳しく向き合いながらも、後輩には優しい先輩であり続けた。オフの時間はひと回り以上年下の若手たちと、マリオカートで対戦。自身のSNSでも、練習に励む選手たちを積極的に発信した。自然なコミュニケーションの中で経験も伝えていった。

7日には新助っ人のマルモレホスにテイクアウトのすしを振る舞った。「日本に来る外国人はすしが好き。ウエルカム・トウ・ジャパンということで」。本拠地でスリッパを忘れた際には、新品をプレゼント。優しい歓迎を受けたマルモレホスは3回に2点適時二塁打を放つなど、お礼と言わんばかりの奮闘。「頑張れワクイサン」と2安打3打点で援護した。

気配りを欠かさない涌井だからこそ、周囲が奮起する。「どんな形でも勝てれば、充実した1週間になると思う。今日は勝たしてもらったので、次回しっかり調整して投げたい」。次は自分のピッチングで勝利を引き寄せる。【湯本勝大】