日本ハム加藤貴之投手(29)が今季初の完封勝利を挙げた。球数は90球。100球未満の完封を意味する「マダックス」を自身初めて達成し、2勝目をマークした。新庄剛志監督(50)はチームに今季初の3連勝をもたらしたサウスポーの省エネ快投を「カドックス」と命名した。

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まだ桜が咲き誇る仙台で、加藤の投球が満開となった。気温10度以下の花冷えナイター。90球目を投げた時点は7・8度。最後の打者、山崎を空振り三振に打ち取ると、左手でポンッとグラブをたたいた。ポーカーフェースの左腕の喜びは、それだけ。昨年10月に104球でプロ初完投初完封勝利を挙げた同球場で、今回は100球未満で飾った3安打完封勝利にも「チームが勝ったことが良かった」とだけ言って笑みを見せた。

90球で完封できた要因を「テンポ良く投げられた。ゴロでアウトを取れたし、自分のボールを投げられた」と分析した。この日はボール球が24球と全体の26・7%。初回と9回が6球と最多で2回から7回までは計7球だけと、徹底的にストライクゾーンで勝負し続けた。軸は平均130キロ台後半の直球でキレ、精度は抜群。変化球も織り交ぜ、無駄な間合いもなく、ストライクを投げ続けてゴロアウトを16個(2併殺含む)も奪った。

テンポの良さはバックの好守も引き出した。初回は二塁スタメンの石井が右翼前までダッシュして飛球をダイビングキャッチ。天然芝のグラウンドでも、加藤の淡々とした投球リズムに乗った内野陣は堅い守備を続けた。バッテリーを組んだ宇佐見との息もバッチリで、100球未満の完封「マダックス」達成に加藤は「本当に野手とキャッチャーのおかげ」と感謝した。

BIGBOSSも満面の笑み。マダックスをもじって「『カドックス』。安心感バリバリありました。素晴らしかった」と絶賛した。完投最少投球数のプロ野球記録は71球。7回までは56球と更新の可能性を秘めていただけに「(ロッテ)佐々木君がその記録(完全試合)なら、こっちは…って。次、狙わせます」。次回登板は70球未満で完封の「カドックス」達成を指令するほど、新庄監督の期待値も高めた加藤の超省エネ快投だった。【木下大輔】

 

◆マダックス 100球未満での完封を意味する言葉として使われる。86~08年に大リーグのブレーブスなどで通算355勝を挙げ、殿堂入りした大投手グレグ・マダックスは、通算35完封のうち13度を100球未満で達成。抜群の制球力は「精密機械」と呼ばれた。球数で降板のタイミングを管理する現代の野球では、100球未満の完封が先発投手の理想になる。

◆加藤貴之(かとう・たかゆき)1992年(平4)6月3日、千葉県生まれ。拓大紅陵では甲子園出場なし。新日鉄住金かずさマジックでは野手転向後に投手に再転向。15年ドラフト2位で日本ハム入団。21年10月18日楽天戦でプロ初完封を記録。通算成績は161試合で35勝34敗、防御率3・58。182センチ、87キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸7300万円。