巨人にまた新星だ。2年目の山崎伊織投手(23)が念願のプロ初勝利を挙げた。

DeNA打線を6回3安打無失点に抑える快投。20年6月にトミー・ジョン手術を受け、長いリハビリ生活を乗り越えた。大学時代の思い出の地・横浜での復活星。プロ野球史上初の開幕から4月までに5投手の初勝利に山崎伊も加わり、記録も更新した。空前の“初勝利ブーム”に乗り、両リーグ最速の20勝で首位を走る。

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山崎伊が止まっていた時を、再び動かした。1回先頭への初球。外角いっぱいに、この日最速タイ149キロ直球を突き刺した。「思い通りに投げられた」と納得の1球で快調に滑り出した。テンポ良く2種のスライダーとシュートを低めに集め、6回3安打無失点。野球少年のように、全力で野球を楽しんだ。「しんどい時間もありましたが、初勝利することができました」とウイニングボールをポケットにしまった。

肌寒くなってきた19年秋の横浜スタジアム。東海大3年時の横浜市長杯を最後にマウンドから姿を消した。右肘を痛め、回復の方法が見えずにもがいた。20年6月に横浜市内の病院でトミー・ジョン手術を決行。人生2度目の大手術にも、マウンド上と同じく肝が据わっていた。「全身麻酔を耐えようと思ったんですけど、気付いたら意識なかったです」とあっけらかんと振り返る。術後は抜糸までの1週間、右腕を大きなギプスで動きを制限された。入浴代わりにタンクトップ姿で、汗ふきシートで体を拭いた日々。今では笑い話に変えてしまう。

そんな山崎伊でも、リハビリ期間はさすがにこたえた。毎朝起きる度に「治ったんちゃうか」。だが、思い込みの希望は、投げる度に痛みで消し去られた。「投げたい」という気持ちは持ち続けた。オリックス山本がSNSで発信した動画を参考に、股割りのストレッチを繰り返した。朝昼晩で1日30分間3セットを欠かさずに続けた。「最初は筋肉が切れたのかくらい張ってた。おかげで柔らかくなった。ケガのしにくさにはつながっているかも」と今に結び付けた。

横浜の記憶を、笑顔の初勝利で塗りかえた。「ここでケガして手術して、ここで初めて勝てた。すごくうれしい」。この場所から、山崎伊の野球人生が再始動する。【小早川宗一郎】

▽父厚志さん(仕事終わりにテレビ観戦) おめでとう。長いリハビリとトレーニング、地道なことを続けたんだなと。周りの方々に感謝して、1日でも長く野球を続けてほしいです。

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