楽天を5カードぶりの勝ち越しに導いた投の立役者は、ベテラン岸孝之投手(37)だった。「日本生命セ・パ交流戦」の阪神戦(甲子園)に先発。表情を変えず、粛々と打者へ向かっていった。丁寧にコーナーを突く投球。打線の援護には恵まれなかったが、7回まで3安打無失点。阪神に流れを渡さず、終盤での勝利に貢献した。

    ◇    ◇    ◇

岸は最後にギアを上げた。6回まで89球で2安打無失点。ノビのある直球と緩急を織り交ぜ、阪神打線に的を絞らせなかった。だが7回、先頭の大山に中堅へ二塁打を放たれ、無死二塁のピンチを招いた。スコアはまだ0-0。2万6000人を超える観客が見守る甲子園。先制点を許せば、厳しい展開になる。

これまで以上に丁寧に打者へ向かった。続く佐藤輝には、6球すべて外角に投げ、最後は126キロチェンジアップで左飛。糸井には逆に2球すべて内角で、144キロ直球で捕邪飛。糸原には4球すべて徹底的に低めを突いて遊ゴロに封じた。

岸は「甘いところにほぼいってなかったと思います。入りも良かったし、勝負球も良かった。全体的にあの場面は集中して投げ切れたと思います」。3つめのアウトを取った瞬間、グラブをポンとたたいた。石井GM兼監督も「7回裏に1点取られるということは、(残り)8、9回しかないので勝機を狭める場面。ああいうところでしっかりとギアチェンジできるのは、さすがだなと思った」と評価した。

直後に代打を送られ、降板。打線は1点が遠かったが、5勝目はお預けとなった。チームは深刻な得点力不足に悩まされ、勝利を重ねられていない中での先発マウンド。「何もないですね。波はあると思うので、そういうところは気にせず。というか、僕は何もできないので、ピッチャーの仕事をしっかりすることだと思う」と平常心を貫いた。やれることをやる有言実行の投球。自らの仕事を果たした。【湯本勝大】

【関連記事】楽天ニュース一覧>>