鳥谷敬氏が体形にまつわる裏話を明かしたのは6月下旬のことだ。

「元ショートのプロ野球選手が太っちゃダメだろって言われて…。憧れの人からそう言われたら、守らないといけないでしょ」

八尾のショッピングモールでトークショーに参加していた際の一コマ。レジェンド同士の掛け合いが興味深かったので、後日、少しだけ深掘りさせてもらった。

現役最終年となった21年のある日、鳥谷氏はイースタン・リーグの西武戦に向けて練習を進めていた。すると、相手チームの松井稼頭央2軍監督が汗だくで現れた。聞けば、朝早くから筋トレに励んでいたのだという。

6学年差の2人は、準決勝に進出した13年WBC侍ジャパンのチームメートでもある。なぜ監督になってもハードトレを? 後輩の素朴な疑問に気付くと、先輩はちょっとした“同盟”を持ちかけてきたそうだ。

「やっぱりショートは太っちゃダメだと思う。だから松井稼頭央と鳥谷敬は頑張らないと」

鳥谷氏は昨季限りで18年間の現役生活にピリオドを打った。今年は日刊スポーツ評論家という立場も含め、各方面で多忙を極めている。それでも身長180センチ、体重76キロの体は誰の目にも引き締まったまま。やはり今も全身を鍛え続けているらしい。

「稼頭央さんと同じカテゴリーに入れてもらえて、うれしかったしね」

日課は自宅の一室での初動負荷トレ。週に数回は筋トレにも時間を割き、2日に1度は10キロ走も敢行しているそうだ。

もちろん、今季から指導の場を1軍に移した西武松井ヘッドコーチも筋骨隆々の肉体はいまだ健在。46歳という年齢を一切感じさせない。

華やかで格好いい。そんなイメージを壊すまいと引退後も努力を惜しまない2人の姿勢を知ると、ショートという花形ポジションが今まで以上に特別に思えてくる。

そういえば、鳥谷氏はトークショーの終盤、虎の後輩の遊撃手としての資質にも太鼓判を押していた。

「スピードがズバ抜けている。守りがどんどんうまくなっているし、打っても積極的にいける。いい選手だと思います」

中野拓夢も、偉大な先輩たちの系譜を引き継いでほしいものだ。【遊軍=佐井陽介】