俺超え。広島床田寛樹投手(27)がDeNA打線を8回7安打1失点に抑え、8勝目を挙げた。前半戦だけで自身のシーズン最多勝利を更新。この日発表された監督推薦による、3年ぶり2回目の球宴出場決定を自ら祝った。首脳陣が大きな期待を寄せる左腕が、チームを1日で3位に再浮上させた。

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マウンドさばきにも、風格が漂う。先発床田は1回に先制弾を浴びる立ち上がり。直球も、変化球も、制球も本調子ではなかった。それでも、蒸し暑いマウンド上で涼しい表情を貫いた。両サイド低めを丁寧に突き、走者を出しても慌てない。自ら4個の打球を処理する守備力はいつも通り。テンポのいい投球が攻撃のリズムを生み、逆転勝利を呼んだ。

「今年一番悪いんじゃないかというくらいのブルペンだった。点は取られましたけど、粘って投げられたというのは自分の中ですごく成長したんじゃないかな」

“球宴からの男”が、球宴までにシーズン自己最多の勝ち星を手にした。昨季は5勝のうち4勝が後半戦に記録したもので、20年も5勝のうち4勝が9月以降に得たものだった。横山投手コーチから「スズムシ」と呼ばれ続けた。「スズムシのように秋だけに鳴くのではなく、シーズン通して活躍してもらいたい。乗り越えてもらいたいから、そう呼び続けた」。今年、ようやく一皮むけた。

試合前には球宴の監督推薦選手が発表され、2度目の出場が決まった。広島先発陣で唯一の選出。「基本は真っすぐ、パームで行こうかなと思っています」と意気込んだ。前回球宴初出場の19年は、夏場以降にスタミナ切れ。練習量が落ちたことが原因だった。今年はオフから「競争」と口にしながらも「左のエース」と自覚し、負荷をかけて取り組んできた。

8回まで首脳陣から継投を尋ねられない無言の続投に「今までよりも少しは信頼してもらえるようになったのかな」と立場が上がった気がした。1日でチームを3位再浮上に導く投球に、佐々岡監督は「勝ちが付いて自信につながっている部分もあると思う。“お前は勝てる投手になれる”とずっと言ってきた」と言葉でも成長を認める。開眼左腕が、存在感を放ち続ける。【前原淳】

▽広島栗林(9回を3者凡退に抑え、2年連続球宴出場御礼セーブ)「チームの勝利に貢献できたのはすごく良かったと思います。結果的に9球で終われたのは良かったと思います」。

▽広島坂倉(4回に決勝犠飛)「チャンスだったので初球から積極的に打ちにいきました」

○…上本が13日、下半身のコンディション不良のため、出場選手登録を抹消された。12日のDeNA13回戦(マツダスタジアム)で痛め、広島市内の病院で検査を受けた。蔦木トレーナーは「試合中にアクシデントがあり抹消しました。(タイミングについて)そこは分からないです。明日から3軍に合流します」と説明。今季ここまで中堅を中心に自己最多71試合に出場し、打率3割8厘、0本塁打、20打点の成績を残していた。

○…長野が1軍復帰から2戦連続先発し、2戦連続安打で存在感を示した。6回1死三塁、大貫の外角球をうまくバットにひっかけて三遊間を破った。技ありの左前適時打で追加点をもたらし、試合中は「トコ(床田)が頑張って投げているので、ランナーを返すことが出来て良かったです。いいところに転がってくれました」とコメントした。

○…床田はウイニングボールを移籍後本拠地初勝利となった秋山にプレゼントした。「(9回に登板した)栗林が最後に抑えるの早すぎてハイタッチに間に合わなかった。ちょうどベンチに行ったときに、栗林がくれたんですけど、秋山さんに渡してと(伝えた)」。その後、秋山から直接感謝の言葉を返され、うれしそうに笑った。

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