投手主将が雨中で快投した! 広島先発の九里亜蓮投手(30)が中日19回戦(マツダスタジアム)に先発。9回134球で、無失点と力投した。しかし打線が9回まで2安打無得点と沈黙。2年ぶりの完封勝利とはいかなかった。先発ローテーションの大瀬良、床田、アンダーソンが離脱した中、今季投手主将に就任した9年目右腕が背中で意地を見せた。チームは延長11回に松山の適時二塁打でサヨナラ勝利。8月1日以来の3位に浮上した。

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サヨナラの一打を九里はベンチ最前列で見送った。決勝打の松山をもみくちゃにする輪に加わり、手荒い祝福を送った。この試合に先発した九里は今季最長9回を無失点。134球の力投で試合をつくった。打線の援護なく、2年ぶり完封勝利は逃したが、チームの劇勝に充実感を漂わせた。「(中日先発の)高橋(宏)くんが良い投球をしていた。なんとか先に点を与えないように必死に投げた」。150キロ超の直球を投げ込む本格派右腕と、締まった投手戦を演じた。

先発陣の苦境を救うように調子を上げてきた。前半戦は17試合で4勝7敗。昨季最多勝の投球は鳴りを潜め、一時期はブルペン待機も強いられた。一方で後半戦に入り大瀬良が不振で、床田とアンダーソンは負傷でローテーションから落ちた。前半戦を支えた3投手が離脱。九里への期待も高まった。同期入団大瀬良が降格時には「頼むぞ」と連絡があった。試合途中から降り始めた雨にも動じず、ただ使命感を胸に、9イニングを投げ抜いた。「(磯村が)いろんな球種を使って良いリードをしてくれた。強気の投球を貫こうと思った結果が良い投球につながった」。プロ通算205試合目で5番目に多い134球に魂を込めた。

雨天に強い“雨男”だ。降雨ノーゲームとなった4日DeNA戦(横浜)でも試合序盤から激しい雨が降っていた。悪天候の中先発し、4回1死まで打者10人を完全投球。11人目対戦前に試合が中断し、その後ノーゲーム。好投は幻となったが、足元がぬかるむ程度で、右腕は動じない。

チームは延長11回に松山のサヨナラ適時二塁打で勝利し、8月1日以来の3位に浮上した。九里は完封勝利こそ逃したが、これ以上ない投球だった。投手主将の9回無失点なくしてこの日の劇的勝利は語れない。【前山慎治】

▽松山(2年ぶりのサヨナラ打に)「九里が9回まで無失点で頑張ってくれて、若い選手もいいプレーをして盛り上げてくれた。ベテランはああいう場面で決めないといけないという強い気持ちになったので、最高の結果です。みんなで力を合わせてやっていくしかないので、こういう勝ち方が毎試合できるように」

▽河田ヘッドコーチ(先発九里に)「いつも四球が絡むが、制球が良かった。変わり身を見せてくれた。投手コーチと話をして勝ちをつけてあげたかったから、130球までいった。辛抱して投げてくれた」

○…3年目韮沢が「8番二塁」でプロ初出場初先発を果たした。プレーボール直後から2者続いた二ゴロを落ち着いて処理。5回は1死から一、二塁間の当たりに飛び込んで捕球するも、一塁送球がそれてプロ初失策を記録した。その後は好守を見せるなどもり立てた。河田監督代行も「1つ暴投になったけど、キク(菊池涼)以上のことはできなくても本当に頑張ってくれた」とたたえた。11回はプロ初犠打で松山のサヨナラ打をお膳立てした。

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