阪神ドラフト1位新人の森木大智投手(19)が、28日の中日戦(バンテリンドーム)に先発で1軍デビューすることが22日、決まった。球団の高卒新人がプロ初登板で初勝利を飾れば、2リーグ分立後初の快挙になる。コロナ禍で苦戦したチームは8連敗からの一気の4連勝と息を吹き返し、再び逆襲ムードが漂う。昨季終盤の大活躍でヤクルトの日本一に貢献した奥川恭伸投手(21)のごとく、ミラクルVの使者を期待だ。

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虎のドラフト1位ルーキー森木が、1軍の「即戦力」として招集される。21日の巨人戦に先発した才木が通例通り、登板間隔を10日前後空けることで巡ってきたチャンスを、19歳右腕がつかみ取った。この日鳴尾浜に訪れた矢野燿大監督(53)が「森木(1軍に)、上げるよ」と明言。28日の敵地中日戦で、プロ初登板初先発のマウンドに立つ。

チームを襲った新型コロナの影響で2軍戦の中止が相次ぎ、当初のデビュー予定からはずれ込んだという。指揮官は「もう少し早く呼びたいと思ってたけど、上げるタイミングがなくて」と明かす。先発の昇格候補だった秋山や桐敷、村上、ウィルカーソンはコロナ明けで、ガンケルはコロナ感染で離脱中。さまざまな要因も重なって今回、背番号20に白羽の矢が立った。

チームは8連敗で沈みかけたが、大山や中野らも復帰して4連勝と勢いを取り戻し、首位に9差の3位。そのヤクルトも前半戦のような勢いがないだけに、再びミラクルへの機運も漂ってきた。1つも落とせない状況での抜てきは、もちろん力を買ってのこと。高卒2年目の昨季終盤に大活躍し、ヤクルトをリーグV、CS突破、そして日本一へ導いた奥川のような奮闘を期待せずにはいられない。

矢野監督 勝つ投球になればもちろんいいけど、やってきたことを思い切り出してもらったらいい。自分の現在地がどうかとか、プロでの第1歩を思い切った投球をして。その結果から自分の良いところとか、課題はこうかなと見えてくる部分が出てくれば。俺の中では楽しんでもらえれば。

森木は「今年の目標は1軍で1勝」と青写真を描き、鍛錬を積んできた。2軍公式戦は主に先発で11試合に登板し、4勝2敗、防御率3・28。21日の中日戦(ほっともっと神戸)では5回を1安打無失点、8奪三振の快投。1軍昇格の当確ランプをともした。

球団高卒新人1年目での先発デビューは、13年の藤浪以来だが、初勝利は2リーグ分立後誰もなし得ていない。「1軍で投げて結果を出さないと意味がない」と、この日を待ちわびていた土佐のいごっそう。球団史に名を刻む快投で、ミラクルを狙うチームを加速させる。【古財稜明】

◆昨季のヤクルト奥川 星稜(石川)からドラフト1位入団2年目。4月8日広島戦でプロ初勝利を挙げるなど前半10試合で4勝(2敗)。後半戦はさらに勢いを増し、8試合で5勝((2敗)を挙げるなど首位阪神を逆転する原動力となり、小川と並ぶチーム最多9勝でリーグ制覇に貢献した。巨人とのクライマックスシリーズでは初戦の先発を任され9回6安打9奪三振で完封。オリックスとの日本シリーズでも初戦に先発し、7回1失点と安定したピッチングを披露した。

▼阪神新人投手のプロ初登板初勝利は過去10人。直近は亜大から入団した18年高橋遥人で、4月11日広島戦(甲子園)に先発し、7回を2安打5奪三振無失点。阪神の高卒新人で、初登板初勝利は2リーグ分立後はいない。なお、1リーグ時代には呉港中(広島)から入団した藤村富美男が、1年目の1936年(昭11)に初登板初先発初勝利。旧制中学は現在の高等学校にあたり、36年の藤村は満20歳のシーズンだった。

▼阪神の高卒新人1年目勝利は、ドラフト制後5人いる。67年江夏豊(12勝)、83年御子柴進(1勝)、86年遠山昭治(8勝)、10年秋山拓巳(4勝)、13年藤浪晋太郎(10勝)。

▼阪神の高卒新人が1年目で先発すれば13年藤浪以来9年ぶり。開幕3戦目の3月31日ヤクルト戦(神宮)に先発し、6回3安打7奪三振2失点で負け投手になった。先発と中継ぎ含め、高卒新人が勝てば、同年4月14日DeNA戦で6回5安打4奪三振無失点に抑えた藤浪以来となる。

<森木1年目のあゆみ>

◆初実戦 3月11日の教育リーグ中日戦(鳴尾浜)でプロ初実戦に臨み、8回に4番手で登板。1回を1安打無失点に封じた。

◆公式戦デビュー 3月31日ウエスタン・リーグのソフトバンク戦(鳴尾浜)で6回から2番手で登板し、3回4安打3失点。

◆先発デビュー 4月26日2軍プロアマ交流戦の社会人・カナフレックス戦(鳴尾浜)でプロ初先発。5回2安打無失点、9奪三振。高知高時代の自己最速を1キロ更新する155キロをマーク。

◆公式戦初勝利 5月25日の2軍広島戦(鳴尾浜)で先発し、6回3安打無失点、8奪三振で初勝利を手にした。

◆甲子園デビュー 7月2日の2軍オリックス戦で人生初の聖地での登板に臨み、6回2安打無失点、自己最多9奪三振を記録。

◆フレッシュ球宴 7月23日にフレッシュオールスターゲーム2022(長崎県営野球場)に出場し、先発で1回1安打無失点。

◆代表選出 8月1日に神宮で行われた大学・社会人選抜との「野球伝来150年 プロアマ記念試合」に臨むU23NPB選抜メンバー入り。3番手で登板し、1回を1安打無失点。

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