矢野監督の現役時の背番号39を継承する男が大仕事だ。阪神2年目栄枝裕貴捕手(24)がプロ初安打初打点を決めた。9回、1点差に迫り、なおも2死一、二塁。代打でプロ初出場し「あそこで引いていたら男じゃない」と覚悟を決めた。ヤクルト守護神マクガフの外角154キロを右前適時打。「本当に死ぬ気でじゃないですけど気持ちで打ちました」。劇的な同点打デビューで甲子園を沸かせた。

この時点でベンチに残る野手は栄枝のみだった。「運命だと思って」。2年前の入団会見で「矢野さんの39を超えるような選手になる」と語った若武者が、レギュラーシーズン最終戦9回2死2ストライクから勝負を決めた。矢野監督からは「持ってるな」と声をかけられ「最後にちょっと、ほんのちょっとですけど、見せられてよかった」。少しだけ恩返しができた。

同期入団の佐藤輝、中野、伊藤将は1年目から活躍。自身は昨季、右肋骨(ろっこつ)の疲労骨折を2度も経験した。「自分ももっともっとやれるのに…って悔しい気持ちがあったから、なんとかここまでやれました」。反骨心が原動力だった。初ヒットの記念球は地元高知の両親に贈る予定。CSでも「持ってる男」が鼻息荒く出番を待つ。【中野椋】

◆栄枝裕貴(さかえだ・ゆうき)1998年(平10)5月16日生まれ、高知県出身。高知から立命大を経て20年ドラフト4位で阪神に入団。佐藤輝、伊藤将、中野らと同期入団。今季ウエスタン・リーグでは68試合に出場し、44安打、1本塁打、14打点、打率2割4分3厘。180センチ、83キロ。右投げ右打ち。

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