オリックスが2敗1分けの窮地から一気の4連勝で、26年ぶり日本一を成し遂げた。

仰木監督やイチローらを擁した95、96年以来のリーグ連覇を決めた22年シーズン。前回連覇時のV戦士である中嶋聡監督(53)が、96年以来の日本の頂点へと導いた。

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最後までやり切った。オリックス中嶋聡監督(53)は、日本一を確信すると三塁側ベンチの椅子から崩れ落ちた。頭を抱えながら喜んだ。勝利をつかむため、自らの眼力と、選手を信頼してつかんだ栄冠だった。

「(報道陣の)みなさんにそう取り上げられますけど、こっちは全部しっかり考えてやっているんです」

マジックには、絶対、種も仕掛けもある。日々変動するスタメン表は、奇襲を狙っているのではない。相手投手や球場との相性、試合前の打撃練習を観察してオーダーは完成する。

歓喜の神宮で5度宙に舞った。胴上げは「落っこちるのが怖いから苦手だよ」と苦笑いだったが、「非常に良い夜空でした」と、日本一の景色を焼き付けた。

指揮官を支えた多くの手を土台に、大きな花を咲かせた。合言葉は「全員で勝つ!」。個々の長所を生かし、適材適所の役回りを与える。生き生きと選手が躍動できるのは、ナカジマジックと称される手腕があるからこそ。それでも「マネジメントできていたかどうか分かりません」と口を結ぶ。「調子の良い選手を使って『全員で勝つ』。それをシンプルにやった結果です」と胸を張った。

2日続けて、積極打法が持ち味の太田を1番で起用。NPB史上初の初球先頭打者アーチを描くと、誰よりも喜んだ。「まさかの初球1点。積極性が欲しいところで、バンバン振っていけるバッターが欲しかった」と笑顔で明かした。

腹をくくっていた。シーズン143試合で141通りのオーダーを組み、リーグ連覇を達成。日本シリーズでも第6戦まで毎試合違うオーダーを組んだが、この日の野手陣は第6戦と同じメンバーだった。シーズン中、前日と同じスタメンは、たった1回だけ。5得点で日本一を決めたズバリ采配も「ナカジマジック」の真骨頂だった。

2敗1分けの窮地から一気の4連勝で、現役だった96年以来の日本一を成し遂げた。昨季敗れたヤクルトにリベンジしたが「ほんとに怖いチームで強かったです」と本音も明かした。もし負けていれば31日の第8戦にもつれ込んでいた。オリックスナインは、もう、神宮には来ない。やって来るのは、日本一の明るい朝だった。【真柴健】

◆中嶋聡(なかじま・さとし)1969年(昭44)3月27日生まれ、秋田県出身。鷹巣農林から捕手として86年ドラフト3位で阪急入団。97年オフにFAで西武移籍。03年に横浜、04年に日本ハム移籍。07年から兼任コーチを務め、46歳の15年に現役引退。実働29年は工藤公康、山本昌に並ぶプロ野球記録。通算1550試合、804安打、55本塁打、349打点、打率2割3分2厘。ベストナイン、ゴールデングラブ賞各1度。16年から日本ハムのGM特別補佐としてパドレスに派遣され、18年に1軍コーチ復帰。19年からオリックス2軍監督。20年8月、西村監督の辞任後に監督代行。21年から正式に監督となった。182センチ、84キロ。右投げ右打ち。

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