<日本シリーズ:ヤクルト4-5オリックス>◇第7戦◇30日◇神宮

 

オリックスが「SMBC日本シリーズ2022」でヤクルトを4勝2敗1分けで破り、イチローらを擁した1996年(平8)以来、26年ぶりの日本一を達成した。4番で選手会長の吉田正尚外野手(29)が、独占手記「頂に駆ける」を特別寄稿。日刊スポーツで連載してきたコラムのタイトルを有言実行し、22年プロ野球の頂に駆け上がった。夢は幼少期から憧れ続けたメジャーリーガー。日本一を置き土産に今オフ、ポスティングシステムによる移籍を目指して第1歩を踏み出す。【取材・構成=真柴健】

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日本一になれましたね! 日刊スポーツ読者の皆さん、オリックスの吉田正尚です。いつも温かい応援ありがとうございます!

日本一のチャンスが来るまで、劣勢の展開も多々ありました。負けたら事実上、終戦とかね。だから、1勝の重みをすごく知っています。その中で苦しいときでも勝ち切れた。楽して勝つよりも、追い詰められてから勝った方が喜びがあります。シンプルですけど「最後まで諦めない」を体現できたと思います。

連覇、日本一は95、96年以来ですか。イチローさんは、オリックスの大先輩でもありますけど、日本のレジェンド。世界で活躍した日本人選手。世界一にもなっている、すごい人です。

常勝軍団を目指すには、やっぱり「個の力」は絶対に大事だと思うんです。個々に力があると、もし誰かがダメでも、他の誰かがカバーできる。そんなチームが強い。今年で言えば、宇田川と山崎颯一郎。開幕したときはいなかった戦力ですけど、途中から出てきてくれました。

例えば、彼らがダメになったとしても、チャンスをうかがう選手がいる。それが常勝軍団。競争に勝つことで、全体の力になる。それは若手、ベテラン関係ない。グラウンドに立つ以上、自信と責任を持ってプレーすることが大事ですね。

僕は常に1番を目指しています。向上心がなくなったら、そこが自分の中での「終わり」。諦めた、ということなのでね。悔しさや反骨心は必要ですね。

「個の集合」で言えば、メジャーリーガーへの憧れは、正直あります。ずっと小さい頃から興味を持っていたので。日本のプロ野球もレベルが高いですけど、やっぱり野球と言ったらMLBが一番大きな舞台。アメリカ人だけでなく、全世界のスター選手が集まる。中南米からも、全ての地域のトップが集まってプレーする舞台。僕も、肌で感じてみたいという思いです。

ただ、意思はあっても、自分の判断だけではいけません。契約上の問題もあります。そこ(ポスティングシステムなど)は球団の方と、日本シリーズが終わってから話し合う。今は、正直にそれしか言えません。

第5戦のサヨナラ弾は、本当に気持ちよかったです。満員の京セラドーム大阪で、大勢のファンの前で打てた。野球人生の中で忘れられないホームランです。

僕たちは無観客試合も知っています。やっぱりファンあってのプロ野球。だからこそ、有休を取って応援に来てくれたり、満員のスタンドはうれしい。僕が入団したころよりファンが増えている実感があります。

僕の有休? 家族サービスです。独り身ではないので。妻、娘たちとの家族の時間も大切ですね。この時期は紅葉も良いですね。日本の四季を楽しみたい。

寂しさで言うと糸井さん(阪神)の引退ですね。ここ数年、本当に悩んでいました。引退セレモニー、涙をこらえて笑って…。引き際も糸井さんらしかった。最後までかっこ良かった。

まだ全然、想像できませんけど、いずれは僕にも来る。井口さん(前ロッテ監督)みたいにホームランを打って終わるか、(MLBの)オルティスやプホルスみたいにまだバリバリやれるのが理想。何でもそう。イメージして、夢を持つ。熱中することが大切。そういう意味では日本一になって、オリックスファン、プロ野球ファンの夢をかなえられたんじゃないかな。夢中で応援してくださって本当に感謝です。(オリックス・バファローズ外野手)

 

○…吉田正が、体を張って貴重な1点を挙げた。1点リードの5回2死満塁。ヤクルト・サイスニードから押し出し死球で追加点をもぎ取った。9回は左翼から試合終了を見守り、歓喜の輪にダッシュした。主砲は今シリーズ8四球、出塁率は4割6厘。勝負を避けられる場面も多かったが、第5戦ではサヨナラ2ランを含む2本塁打と4番の仕事を果たした。CSファイナルステージで獲得したMVPは杉本に譲ったものの、2本塁打、4打点で日本シリーズ優秀選手賞に選ばれた。

 

○…オリックス吉田正の父正宏さんが、福井・麻生津(あそうづ)小学校の卒業文集を見せてくれた。12歳の吉田少年が「僕の将来の夢は大リーガーです」の書き出しで、アメリカンドリームへの思いを語っている。

 

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