<日本シリーズ2022:ヤクルト4-5オリックス>◇第7戦◇30日◇神宮

再会は、隅田川にかかる橋の上だった。通勤途中の私の前方から、オリックス中嶋監督が近づいてきた。今年1月29日のことだ。「おう! どこ行くの?」。こうやってしっかり対面するのは、日本ハム担当記者だった17年以来。だがまるで、前日も会っていたかのような口ぶりで、何も変わらない中嶋コーチ(…いや監督)がそこにいた。

しばしの雑談。落ち着いたところで、思い出す。「あ、(21年の)リーグ優勝おめでとうございます」。あまりにもタイミングを逸した祝福。「もう去年のことやぞ」と笑いながら、中嶋監督が続けたのは「…最後勝てなかったからな」。好ゲームを展開しながら日本一を逃した悔しさが伝わってきた。

この日はキャンプ地入りする前日だった。中嶋監督は散髪して空き時間ができたから散歩していたのだと言った。「そういえば1回も渡ったことないなと思って」。どこかに向かっているのではなく、目的地はこの橋だった。それ以上は聞かなかった。思いは、理解できたから。2人の足元にあったのは「勝どき橋」。あれから9カ月。オリックス選手たちの勝利の雄たけびが、神宮の空に響き渡った。【08~17年日本ハム担当 本間翼】