「令和の怪物」が侍ジャパンデビューを果たした。佐々木朗希投手(21)が「侍ジャパンシリーズ2022」の最終戦となるオーストラリアとの第2戦(札幌ドーム)に先発。

WBC使用球、初の札幌ドームのマウンドへの順応に苦しみながらも、最速159キロで尻上がりに改善した。冷静な投球で4回4安打無失点。来春WBCで先発ローテ入りが期待される剛腕が、トップチーム初登板で初勝利。本番への経験値を積んだ。

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佐々木朗が静寂の札幌ドームを剛速球で切り裂いた。1回先頭の初球。158キロ直球で、応援歌が流れず無音の場内を沸かせた。

だが緊張感のある侍ジャパンデビューマウンドで制球が定まらない。2球目の159キロ直球を右前に運ばれると、四球で無死一、二塁。見逃し三振で1死とするも、4番ウェードへのフォークが2球連続で高めへ抜けた。NPB球とは異なる滑りやすいWBC使用球への対応に、初登板となる札幌ドームのマウンドへの対応が重なった。「マウンドは初めてで、ボールもいつもと違ったので、探りながらでした」。ロッテで二人三脚で歩んできた吉井投手コーチも「直球も変化球もおそらく5割くらいの仕上がり」と証言した。

それでも良くないなりに最速159キロ直球とフォークを軸に4回4安打無失点。クールに相手打線を封じた。2回からはやや力を抜き、バランスの良いフォームで安定感をアップさせて0を並べた。59球中、24球でフォークを投げ込み「徐々に修正しながら投げました。フォークは修正できなかったのでこのタイミングで練習しようと」と先を見据えた。

いつか、侍ジャパンの一員でマウンドに立つ日をイメージしてきた。プロ1年目の新人研修中、学ラン姿でWBCの優勝トロフィーを目の当たりに。「いつか自分もその一員として、世界で戦いたいなというふうに思いました」と胸を高鳴らせた。一方で、テレビ画面から日の丸を背負う重圧がひしひしと伝わってきた。金メダルを獲得した昨夏の東京五輪に「あの緊張感の中で結果を残すことは大変だと思って見ていました」と責任の重さも感じた。

独特な国際試合の緊張感の中、初の札幌ドームのマウンド。「責任や重圧もあるけど、結果を残していかないといけない」とかみしめた。来年3月の本大会でのメンバー入りへアピールすべく「令和の怪物」が冷静な投球で試合を組み立てた。【小早川宗一郎】