マサカリ投法で知られる、プロ野球元ロッテ投手として活躍した村田兆治さん(72)が11日に亡くなった。日刊スポーツ評論家の梨田昌孝氏(69)が近鉄の現役時代にバッテリーを組んだオールスターゲームの秘話を明かし、故人を悼んだ。

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朝のニュースで知り、何とか命だけでもと思ったが、亡くなられて、ものすごくショックだった。

現役時代に、村田さんのフォーク、スライダー、真っすぐという3種類の球種で、ロッテの捕手がパスボールしていた。なぜ後ろにそらすのだろう、と疑問を感じて、受けてみたくなった。

プロ8年目の昭和54年(79年)にオールスターに出させてもらい、村田さんとバッテリーを組むことができた。私は初めての出場で緊張もあったが、もっとうまくなりたいという気持ちがあった。「ノーサインでお願いします」と言うと、けんもほろろに「ナシ、恥をかくよ、やめとけ。オレのボールを簡単に受けられるか」と返された。その時は、ランナーが出るまでノーサイン、出たらサイン出そうという話になった。無事に終わり、翌年のオールスターでまたバッテリーを組むことができた。運命を感じたよ。再びノーサインでお願いすると、「いいよ」と二つ返事でOKしてくれた。試合後に「ナシ、すごいな。オレの球をノーサインで受けた。日本一だ」という言葉をもらった。それがすごく自信になり、成長につながった。

実際に受けた「マサカリ投法」はすごいの一言だった。左足を高く上げて、お尻が捕手のほうに迫ってくる。どんな球が来るんだろう、と打者はもちろん、捕手でも恐怖だったよ。あのダイナミックさに、「これや」と思いながら、夏の暑い時に汗をびっしょりかきながら、受けさせてもらった。

私のほうが引退が早かったので、解説者として、村田さんをインタビューする機会があった。その時、ボールを持ってきて、人さし指と中指で握り、「ナシ、これを外せ。取ってみろ」。片手では全然取れないので、「無理ですよ」と言うと、「両手で取れ」と。それでも取れない。「すごい握力ですね」と驚くと、「フォークがなければ、この世界で生きていけない」とね。グラスを持つ時に、人さし指と中指で挟んで飲んだり、寝る前にボールを挟んだまま、包帯でぐるぐる巻きにしたり、すごく努力したという話を聞いた。こだわりのある人だった。

私にとって、村田さんはキャッチングの恩人。突然の訃報はショックだし、残念です。ご冥福をお祈りします。