北海道のファンにとっても特別な年になる。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパン入りが濃厚な日本ハム伊藤大海投手(25)が、新春インタビューで世界一へ貢献することを誓った。

パドレス・ダルビッシュ有投手(36)、エンゼルス大谷翔平投手(28)の球団OBとチームメートとなり、頂点を目指す。さらにその後は新球場「エスコンフィールド北海道」の開業が控える。両舞台で活躍し、最高の1年にする。【取材・構成=永野高輔】

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記念すべき年を、最高の1年にする。21年の東京五輪でも金メダル獲得に貢献した伊藤が、今度は最強メンバーとともに世界一を目指す。日本ハムのレジェンドでもあるダルビッシュ、大谷との共闘が実現する。

「(今後も)選ばれ続けたいという思いもありますし、まっとうしたい。普段のシーズンとは違った緊張感もある。逆にそれが楽しさでもあったり。そういうのって誰もが経験できるものじゃない。他の国のメンバーを見ても、WBCにかける思いは、すごくあると思います。一発勝負。ラウンド制ではありますが、1つの結果が、大きく左右する。(救援での起用となりそうだが)より1球で決まるというか、1球1球に勝負がかかっている。3アウトの中の、密度の濃い十何球になる。そういうところは全力でいくしかない。ただ、それだけだと思う」

昨年11月の侍ジャパンの強化試合では、気づきがあった。最初の登板となった巨人戦はタイブレーク練習で登板し2点を許したが、続くオーストラリア戦はオール直球で3球三振を奪うなど、3者凡退に抑えた。

「ボールが滑るとかあまり考えずに、いつも通りに投げるのが一番だったのかなと思った。うまくいかないときは、考えすぎてしまう。滑りたくない、抜けたくないとか。いいときって何も考えずに投げられる。そうするには、自分を信じるしかない」

ダルビッシュ、大谷を含めたレベルの高いチームメートたちとの戦いは、帰国後のシーズン開幕にも間違いなくプラスとなる。「エスコンフィールド北海道」には先月再視察に訪れ、実際に芝が敷かれた状態を初めて見た。

「今までにないような空気感もある。そこに慣れていくことも大事。札幌ドームも新球場も経験できることはない。エスコンフィールドに移転した最初の年に、印象に残るピッチャーとして、ずっと言われ続けるような成績を残したい」

加藤貴が指名されている開幕投手の座も、ひそかにあきらめていない。

「まだわからないですからね。何かあるかもしれない。心のどこかで奪ってやろうかなということは思っているので。そのくらいの気持ちは持って。オーダーシートに書くまではあきらめないでいく。まあ、ほぼないと思いますが(笑い)。でも、加藤さんが行って、上沢さんが行って、僕が行って3連勝がベストかなと。3連勝したらみんな初勝利ってことにしてくださいよ(笑い)」

ダルビッシュも大谷も15勝を挙げたプロ3年目。伊藤も飛躍の年にする。

「上沢さんに負けないように16勝。信頼を得る1年にすることが一番。1年目はルーキーで全力で次に進む。2年目はいろいろ分かった上で結果を残さないといけなかった。3年目はチームのことも考えて、いろいろ視野を広げていかないといけない。そういう立場になれる、地位をつくれる1年にできたら。ダルビッシュさんや大谷さんの系譜を継ぎたいと、強く思っています」。

■編集後記

伊藤に個別インタビューするのは、ドラフト会議を控えた20年夏以来だった。アマ野球担当をしていた当時、伊藤は苫小牧駒大(現北洋大)4年で、侍ジャパン大学代表の抑えとしても活躍していた。当時から質問の理解が早く、リアクションも丁寧だったが、プロに入ってより洗練されていた。

契約更改時に「支配者」と来季目標を記していたが、今回あらためて色紙を手渡すと目指すタイトルを「沢村賞」と記してくれた。さらに最後に「もう一つ挙げてみて欲しい」とねだってみた。さすがに「3つ目ですか」と苦笑いしていたが「信頼を得ることが一番大事ですね」と、しぼり出してくれた。

伊藤が掲げた23年の目標の頭文字は支配者、沢村賞、信頼と、いずれもS。先発志向が強く「抑えはやりません」と断言していたが、くしくも、セーブを意味するSがずらり。22年の活躍で、先発、抑えのどちらをやっても絵になる投手であることは証明された。難しいとは思うが、できれば“二刀流”で奮闘する姿も、見てみたい。【日本ハム担当・永野高輔】